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2017年2月13日 (月)

奥の細道を読む・歩く(166)

酒田[吹浦]②

 

 手前の道路に木でできた一の鳥居があり、鳥海山大物忌神社吹浦口ノ宮の境内となるところにも木でできた二の鳥居があります。うっそうとした丘が後ろに広がる神社です。この神社の本社は海抜2236メートルの鳥海山頂に鎮座しており、麓に里宮として吹浦と蕨岡に口ノ宮があります。社務所には、この神社は日本最北の一之宮だと書いてあります。山頂本殿式年遷座が平成29年に行われるという幟も立っています。

 長い石段が真っ直ぐに続いていますが、上るのは敬遠します。なにしろこの日は徒歩の道のりが長いのです。目の前にあるのは下拝殿ですが、そこでお参りをします。石段を上ると上の拝殿と本殿があるのですが、遙拝します。

 引き返して、琴平神社の横を通って、積み石で囲まれた小さなガードをくぐって、JR羽越線の海側へ抜けます。水辺となって、小さな舟がつながれています。月光川の河口部分ですが、それに沿って歩くとすぐに日本海です。吹浦漁港も見えます。港の向こうに見える山並みの中には温海山も見えているのでしょうか。風は強くはありませんが、渚近くの海は白波が立っています。遠くにも近くにも風力発電の大きな羽根が回っているのが見えます。

 国道345号を右にカーブして歩いていくと碑が見えてきます。「あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ」が海を背にして建っています。

 「あつみ山や」の「や」は字余りです。温海山と吹浦は離れたところにあります。温海山が遠くに見えて吹浦は目の前です。温海山から吹浦にかけて見渡したという印象を出すためには、この「や」が必要であるのでしょう。「あつみ(温い・暑い)」ものを「ふく(吹く)」ことによって、涼しさを呼び寄せるという気持ちがあるのでしょう。眺望をほしいままにして夕涼みをしているという伸びやかさがあります。これまで続いた山旅から、海岸に出ることによってほっとした思いになっているにちがいありません。ただし、この句は、句碑が建っているところで作られたかどうかはわかりません。「淵庵不玉と云医師の許」での句会で歌仙を巻いたときにこの句が記されています。

 句碑の下の海岸は出羽二見と呼ばれる景勝の地です。伊勢の二見浦と同じように、対となった岩に注連縄が渡されています。右側の大きい方の岩には赤い鳥居が立てられています。鳥居の後ろが一段高くなって、松の木が生えています。

 国道は海岸に沿って曲がりくねっていきます。しばらく歩くと左手に小高い丘が現れましたので、上っていきます。赤くなった松の落ち葉が幾重にも積もったところを歩いていくと、松の木陰から平らな島が見えてきます。沖合に浮かぶ飛島です。現在は酒田市に属しています。丘の上は広場になっていて、地元の人たちの句碑なども建てられています。

 そして、この広場から下に見えるのが羅漢岩です。吹浦海禅寺の寛海和尚が、日本海の荒波で命を失った人を供養するとともに、海上の安全と仏道の興隆を願って、岩に刻みつけた羅漢像です。数百メートルにわたる奇岩に、石工とともに十六羅漢とその他の仏像を刻んで、明治初年に完成させたと言われます。説明板と照らし合わせながら、その像を眺めます。茶色を帯びた岩には白波が寄せては返していきます。加藤さんは羅漢や海に向かって絵筆を走らせます。

 ここから北の方に見える岬が、山形・秋田県境の三崎公園のあたりだろうと思われ、そこを目指して歩き継いでいきます。

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