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2017年5月 4日 (木)

ところ変われば… (4)

理屈が立つ

 

 「ことばの広場 校閲センターから」という欄で、「ひなんしょ?ひなんじょ?」という話題が掲載されました。ラジオ・テレビならともかく、新聞にとっては大事な問題でもないと思うのですが、この言葉を取り上げた理由がわかりません。

 清濁のことについては、「濁らないのは主に西日本、濁るのは東日本」と書きながら、NHKは「清濁を両方認めています」と述べています。

 NHKがそのような発音にしたという理由を述べている一節が、なんとも滑稽です。

 

 「阪神淡路大震災のとき、『じょ』が便所を連想させ『汚く聞こえる』との声が被災者の住民からあり、放送で『しょ』と発音したとあります。」

 

 阪神淡路大震災の被災地は西日本ですから濁りません。「ひなんしょ」です。それを東京の報道機関が、勝手に「ひなんじょ」と濁音にしたのです。その後、西日本の発音に戻したということでしょう。「ひなんじょ」が「便所を連想させ」たというのは、まるで落語のようではありませんか。

 「ひなんじょ」が便所(べんじょ)という言葉を連想させると言った人が本当にいたのでしょうか。それなら、洗面所(せんめんじょ)はもちろん、近所(きんじょ)もイメージの悪い言葉ということになります。

 この記事は、「ん」などの直後の音が濁る「連声濁」などの現象を詳しく述べた後、記事の最後は、このように結ばれていました。

 

 「とはいえ、古語と違って現代語は連声濁が起きないこともあり、『ひなんしょ』も今では自然な発音です。『ひなんしょ』も『ひなんじょ』も、それぞれ理屈が立つと言えそうです。」 (朝日新聞・大阪本社発行、2017年4月12日、10版、13ページ)

 

 「理屈が通る」と言い方が普通だろうと思います。いつから、「理屈が立つ」という言い方が使われるようになったのでしょうか。私には、目新しい表現のように思われます。本文だけではなく、見出しにも「どちらも理屈が立っている」と書かれています。実は、本文を読む前に、見出しの表現に違和感を持ったのです。

 「ところ変われば…」これは、首都圏で使われている表現なのでしょうか。それとも報道の世界で使われ始めた業界用語でしょうか。放送であれば聞き逃してしまいそうですが、新聞で堂々と書かれると、やっぱり一言、もの申したくなるのです。しかも、校閲に関わる仕事をしている人の表現ですから…。

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