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2017年7月 6日 (木)

奥の細道を読む・歩く(184)

冬と春が行き来する県境地域

 

 やや小降りになってきたので、府屋駅に向かって歩き始めます。よほどのことがない限り、風雨の中でも歩き続けるのが私たちの基本の姿勢です。道端に、4月2日には笹川流れマラソン大会を行うので通行規制をするという予告看板が出ています。北国に春を告げる行事なのでしょう。

 強い風雨は一時的なものとして通り過ぎたようで、しばらくすると傘が要らなくなりました。薄い日が射してくるようになると 海は穏やかさを取り戻します。冬の厳しさから春の穏やかさへの変化を感じます。戊辰東北戦争の古戦場などというところもありますが、眺めるのは左手の山と、右手の日本海ばかりです。

 『曾良随行日記』の6月28日の項には、「廿八日 朝晴。中村ヲ立、…… 甚雨降ル。追付、止。申ノ上刻ニ村上ニ着。」とあります。芭蕉たちは中村(新潟県の北端の旧・山北村)から葡萄峠を越えて村上に入ったようですが、私たちは海岸にできている道を歩いています。それにしても、芭蕉たちとは季節が違いますが、朝は晴れ、のちに甚だしい雨に見舞われ、しばらくして止んだという天候は、ずいぶん似通っているように思います。

 岩崎という地名表示が出ているところで、国道7号からわかれて左の道へ入ります。真っ直ぐ進むと笹川流れまで8㎞、左に進むと日本国まで8㎞、とあります。日本国というのは県境にある555メートルの山のことですが、その名前ゆえに話題になることが多いのです。

 集落の中を歩きます。ブロック塀の上に、木などで塀を継ぎ足して風除けにしている家もあります。冬の厳しい風を防ぐためのものです。集会所のようなところの前に、手製の看板が掲げられて、「岩崎 ゆたかな村」と書いてあります。魚を持ち上げている人、稲束をかかえている人、西瓜や南瓜を持っている人が描かれています。厳しい自然の中であっても、農村・漁村の幸に恵まれているのでしょう。

 羽越線の線路をくぐって山側に出ます。「雷~関川間、除雪のため当分の間 全面交通止」という看板があって、海岸から離れて山間部に入るところでは、冬の最中の感じがします。このあたりは、厳冬と早春が混在しているようです。

 「日本国登山口」という表示のあるところで 川を渡ります。そして、府屋の集落の中心であるようなところを通ってから、造船所踏切の手前を左に折れると、すぐに府屋駅に着きます。造船所とは大げさだとは思いますが、漁船などを建造するところがあるのでしょうか。府 屋は一部の特急列車が停まる駅です

 駅のホームからは、彼方に鼠ヶ関の弁天島の灯台がかすかに見えます。ホームには小さな鯉幟を逆さにしたようなものが並んで吊り下げられています。頭が下向きになっていますから、家々の軒下に吊される塩引き鮭です。これは村上の冬の風物詩です。

 日本海の景色を窓辺に、普通列車で村上へ向かいます。

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