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2017年12月31日 (日)

じいさまはヤマへしばかりに -明石日常生活語辞典を作るということ-②

()「やま」は高地のこととは限らない

 

 「やま()」はどんなに簡単な国語辞典にも載せられている言葉です。仮に『岩波国語辞典・第四版』を見ると、次のような意味が連ねられています。

  ①平地より著しく高く盛り上がった地形の所。

  ②山()のような形に盛り上げたもの。

  ③物事の絶頂。クライマックス。

  ④「山鉾」の略。

  ⑤《名詞にかぶせて》山野に自生するものである意。

 用例として、①には「富士は日本一の-」、②には「ごみの-」、③には「事件の-に達した」、⑤には「-ぶどう」が挙げられています。

 このような意味が、現在の共通語としての一般的な意味だということは納得します。

 少し詳しい説明が載っている国語辞典、例えば『広辞苑・第四版』を見ると、意味が細かく分類されていますが、右に挙げたような意味の他に、次のような意味も書かれています。

  ⑧山林。平地の林をもいう。

 これには用例は挙げられていませんが、現代語としてもそのような意味があるということを言っているのです。

 『日本方言大辞典』で「やま【山】」を引くと、①山林。②山野。野外。野辺。③疾病の神を祭るために御幣を立てた山。④神聖な土地。⑤森。林。⑥田畑。耕作地。野良。⑦田。⑧やぶ。……として39種類の意味が書かれており、そのような意味で使っているところの地名が列挙されています。

 この辞典に掲載されている方言地図を見ると、林のことを「はやし」と言うのは当然としても、林のことを「やま」と言うこともある地域は、近畿・中国・四国・九州地方などに広がっており、関東地方にもまとまった分布があります。「やま」と言うこともある地域はそれ以外にもあちこちに点在しており、ほぼ全国にわたると言ってもよいように思います。

 明石の西部で生まれ育った私は、「やま」という言葉を、そんなに広くもない林のようなところを指して使っているのを、よく聞きました。「やまで 松葉をかき集めて 燃やす。」というような言葉遣いです。

 つまり、『ももたろう』の「じいさま」が柴刈りに出かけたのは、高い山でなくてもよいような気がします。「やま」という言葉には、共通語で理解されているような意味の他に、方言としての使われ方もあるのです。(ただし、昔々は、全国で広く、そのような意味で使われていた言葉であるとも言えるでしょう。)

 もっとも子ども向けの絵本では、山にはある程度の高さがなくては絵にならないであろうという事情は否定しません。

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