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2018年1月18日 (木)

奥の細道を読む・歩く(234)

那谷寺をめぐる

 

 那谷寺の山門を入ったところは、寛永年間に作庭された庫裏庭園です。杉の木の根元など、あたり一面は苔でおおわれています。

 普門閣・宝物館は、寺院とは異なる感じがするのですが、1965(昭和40)に白山の山麓、旧新保村の春木家を移築・保存したものだと言います。休憩所・売店を兼ねています。商業的に施設も、寺の運営のためには必要なのでしょう。

 大きな木々の間を参道が貫いていますが、それが終わって空が見えたところで 左手に池が現れて、その向こうに奇岩遊仙境が見えます。ここは「おくのほそ道の風景地」として国名勝に指定されています。山門までの田舎の村落風景、山門を入ってからの古木のたたずまい、そして奇岩霊石の世界。眼前のものが次々に変化していきます。

 そこに一枚の掛札があります。「遠い遠い昔、自然は神だった。人は皆、神の恵みに感謝していた。だから誰も自然を傷つけることをためらった。生きとし生ける全てのものと共に生きる喜びに満ちあふれていた。しかし今、我々は……」

 「しかし今、我々は……」で文章は終わっているのですが、今の人たちはこのように手取り足取り、説明されないと、自然の恵みを忘れてしまって、平気で自然を傷つけてしまうのです。眼前の喜びに心を奪われ、自分たちを取り巻くものからの恩恵を忘れてはなりますまい。

 真っ赤な紅葉の向こうに本殿である大悲閣が見えます。観音霊水の前を通って、大悲閣への石段を上ります。一向一揆の兵乱で荒れたものを1642(寛永19)に前田利常が再建したということですが、岩壁に依りかかるように建てられています。殿内には胎内くぐりもあります。岩を切り開いたような、狭い切り通しの道を通って下に向かいます。

 同じ寛永期に建立された三重塔があり、色鮮やかな楓月橋を渡って、展望所に出ます。下から仰ぎ見た奇岩遊仙境に対峙する高さになります。ここは浄土を思わせる境地です。紅葉もありますが 全山が緑におおわれた静かな世界です。しばらく、見入ります。

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