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2018年2月19日 (月)

奥の細道を読む・歩く(266)

弥陀ヶ原から山頂へ

 

 「八日、月山にのぼる。木綿しめ身に引かけ、宝冠に頭を包、強力と云ものに道びかれて、雲霧山気の中に、氷雪を踏でのぼる事八里、更に日月行道の雲関に入かとあやしまれ、息絶、身こゞえて頂上に臻れば、日没て月顕る。笹を鋪、篠を枕として、臥て明るを待。日出て雲消れば、湯殿に下る。

 谷の傍に鍛冶小屋と云有。此国の鍛冶、霊水を撰て、爰に潔斎して劔を打、終月山と銘を切て世に賞せらる。彼龍泉に劍を淬とかや。干將・莫耶のむかしをしたふ。道に堪能の執あさからぬ事しられたり。岩に腰かけてしばしやすらふほど、三尺ばかりなる桜の、つぼみ半ばひらけるあり。ふり積雪の下に埋て、春を忘れぬ遅ざくらの花の心わりなし。炎天の梅花、爰にかをるがごとし。行尊僧正の歌の哀も爰に思ひ出て、猶まさりて覚ゆ。惣而此山中の微細、行者の法式として他言する事を禁ず。仍て筆をとゞめて記さず。坊に帰れば、阿闍梨の需に依て、三山順礼の句々、短冊に書。

   涼しさやほの三か月の羽黒山

   雲の峯幾つ崩て月の山

   語られぬ湯殿にぬらす袂かな

   湯殿山銭ふむ道の泪かな  曾良 」

 

 八合目という言葉からは、山頂は近いような印象を受けますが、山頂までは6㎞近い石ころ道を登らなければなりません。芭蕉は「木綿しめ身に引かけ、宝冠に頭を包、強力と云ものに道びかれて、雲霧山気の中に、氷雪を踏でのぼる」と書き、その距離を「八里」としていますが、それは月山八合目よりはずっと下からの距離です。それにしても「日月行道の雲関に入かとあやしまれ、息絶、身こゞえて頂上に」着くことになるでしょう。月山は盛夏でも雪が残っているところがあるのです。

 駐車場のあるところから石段を登ると、そこからは弥陀ヶ原の湿原が広がっています。しばらく行くと御田原参籠所があり、月山中ノ宮があります。このあたりでは、団体で訪れている白装束の参拝者をたくさん見かけます。参拝を済ませて出発すると、ちょっと雨模様になりました。

 広い湿原ですが、木道や細い石ころ道を進みます。この湿原を一周して観察する道も作られていますが、そんな時間の余裕はありませんので、月山山頂への道をたどります。

 黄色いニッコウキスゲ、紅紫色のハクサンチドリをはじめいろんな花が目を楽しませてくれます。あちこちに小さな池もあります。小さな石が凸凹に敷かれているのを踏み、右へ左へ身をよじらせて、大きな石は迂回しながら、ゆっくり登っていきます。小雨が霧に変わり、それが止んでも、なかなか青空にはなりません。

 参籠所のあたりから1時間余りして、やっと鳥海山が、雲の間から見えるようになりました。姿の美しい鳥海山も山頂の辺りには、雪の縦縞が見えます。こちら月山も、目の下に雪が残っている部分があります。そうこうしているうちに道が雪の下に消えています。ここは雪の上を歩きます。大勢がここを歩いていますから雪が黒く見えるところがあります。このあたりは背の低い灌木だけになって、見晴らしが良くなりました。

 ようやく月山九合目に着き、仏生池小屋で休憩し昼食をとります。標高1743メートルと書いてあります。頂上までの道のりの半分が終わったのですが、予想していたよりも時間が速く過ぎています。とはいえ、疲労回復のためにゆっくりと食事をします。

 ハクサンシャクナゲの白い花が目立つようになりました。小さなイワウメも咲いています。オモワシ山の麓を経て、行者返しをかきつくように登り、また木道を歩いたりします。山頂が近付くと、また雪の上を歩きます。少しずつ溶けている雪ですから、洞穴のようになっいるところもあります。山頂の堂宇見えるようになって、やっと月山山頂に着きます。登ってくる途中は人をあまり見かけなかったのですが、山頂の周りには大勢の人たちが休んでいます。

 月山神社に参拝します。拝観料(お祓い料)を払うと、お祓いをしていただいて、登拝認定証をいただけます。「あなたは、標高1984mの出羽三山の主峰月山を踏破し月山頂上鎮座、月山神社本宮を参拝されました。其の健脚を称え、ここに認定証を授与します。」と書いてあります。八合目からは、歩く以外の方法はないのです。頂上の境内をぐるりと一周しますが、ここは撮影禁止になっています。

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