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2018年4月28日 (土)

言葉の移りゆき(11)

腑に落ちない「二次被害」、腑に落ちる「二次被害」

 

 財務省の事務次官を女性社員がセクハラの被害を受けた事件で「二次被害」という言葉を何度も聞きました。

 

 女性社員は1年半ほど前から福田氏と1対1の会食を持ち、セクハラ発言を受けるようになり録音を始めた。今月4日の会食時にもセクハラ発言を受け、上司に被害を報じるよう相談した。しかし、上司は本人が特定されるなどの「2次被害の心配」から「報道は難しい」と伝えたという。

 (毎日新聞・大阪本社発行、2018年4月19日・夕刊、3版、11ページ、石山絵歩)

 

 身を守るために会話を録音し、セクハラの事実を報道すべきだと上司に相談したが、二次被害のおそれを理由に難しいと言われたため、週刊新潮に連絡。取材を受け、録音の一部も提供したという。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年4月20日・朝刊、13版、1ページ)

 

 この場合の「二次被害」という言葉はテレビ朝日から出たものであって、新聞社が選んだ言葉ではありません。記事によると、「二次被害」の内容を「本人が特定されるなど」としていますが、「など」とは何かということが気になります。セクハラがエスカレートして、更に大きな被害を受けるということでしょうか。そんなことはあってはなりません。また、週刊誌に連絡をする段階では、被害者は「本人が特定される」ことを覚悟していたのではないでしょうか。

 例えば土砂崩れの被害者を救出しようとするときに、天候が悪化して「二次被害が心配されるから作業を中断する」というようなニュースを聞くことがあります。「二次被害」とは、似たような被害が起きるとか、拡大した被害が起きるとかのような意味に理解しています。

 そのように考えると、この事件に関する「二次被害」という表現は、腑に落ちません。外部に漏らすなという理由付けに使っているだけだという印象です。

 後日、あるテレビの番組で、この二次被害のことを、「持ちつ持たれつの関係が崩れる」ことだと言っている人がいました。この意見を聞いて「二次被害」の意味が腑に落ちました。テレビ朝日は、今後の(財務省に対する)取材活動に制約(被害)を受ける恐れがあると考えて、記者の行動を抑制するために「二次被害」という言葉を使っていたのかもしれないのです。もしかしたら、これはテレビ朝日での「一点五次被害」(外部で二次被害を受ける前に、別の被害を社内で受けていた)ことになるかも知れません。

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