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2018年4月25日 (水)

言葉の移りゆき(8)

「成り下がる」の意味

 

 政権をめぐって問題や疑惑が噴出していますが、そんな中で野党合同ヒアリングの存在感が大きくなっています。そのヒアリングについての記事の中に、次のような表現がありました。

 

 ヒアリングのあり方に批判がないわけではない。

 6党の枠組みに入らない日本維新の会の馬場伸幸幹事長は、マスコミに全面公開して野党議員が省庁幹部に迫る手法を、「つるし上げのようで単なるパフォーマンスに成り下がっていないか」と指摘する。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年4月21日・朝刊、13版、4ページ、山岸一生)

 

 「成り下がる」の反対の位置にある言葉は、「成り上がる」でしょう。「成り上がる」を『広辞苑・4版』は、「低い身分や地位から出世する。貧乏なものが金持になる。」と説明しています。他の国語辞典もほぼ同様です。

 けれども、「成り下がる」はそれと正反対の意味でよいのでしょうか。『広辞苑・4版』は「富貴から貧賤となる。おちぶれる。」となっています。『現代国語例解辞典・2版』は「おちぶれる。」だけです。経済的な条件に限定しているようです。『三省堂国語辞典・5版』は「①おちぶれる。②実がなって、いっぱい下がる。」として、それらとは別の意味である②を加えています。

 それに対して、『明鏡国語辞典・初版』は「地位・財産などを失ってみじめな境遇になる。落ちぶれる。」と説明し、『新明解国語辞典・4版』は「経済状態や社会的地位が昔と違って、極端に悪くなる。おちぶれる。」と説明しています。経済的なことの他に、社会的な地位が加わっているのです。少し前進しています。

 けれども、引用した記事の文脈は、経済的な意味は無関係であるとともに、ヒアリングをしている人たちの社会的な地位が低下すると言っているわけではありません。ヒアリングの価値が下落している、あるいは議員のやり方がよくないと言っているようです。

 救いは『岩波国語辞典・3版』です。そこには、「生活・地位・根性などがおちぶれる。」と書いてあります。「根性」という言葉が最適であるかどうかわかりませんが、この辞典の説明には、少し納得します。ヒアリングを行っている人の心の中のことに立ち入ることになるからです。

 「成り下がる」という言葉から私が受ける印象は、意気はあるが内容が伴っていないとか、努力不足で品格が欠落しているとか、全体としての質が下落しているとかいうことです。この記事の文章の流れ(および、党役員の言葉の選び方)について、日本語としての違和感はありませんが、国語辞典がその意味を、まだ認めていないということなのでしょう。

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