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2018年4月20日 (金)

言葉の移りゆき(3)

「!」の横行

 

 新聞の紙面で最も「!」の記号の多いのはテレビ欄でしょうか。新聞のテレビ欄は通信社から送られてくる情報をそのまま紙面に反映しているようですから、その記号を勝手に減らすわけにもいかないのでしょう。それにしても多すぎます。中には「!」が2つも3つも並んでいる場合もあります。

 もっとも、テレビ画面自体には、次々とこの記号が現れます。NHKと民放とに大差はないように思います。あまりにも押しつけがましい現象が拡大しています。

 この記号は、感嘆符とか、エクスクラメーション・マークとか、びっくりマークとか言われて、感動・驚き・怒り・強調などの気持ちを表します。その記号を使う人から、受け手に向かって感情が伝えられるのですが、今では一種の宣伝記号に堕してしまっているようです。

 次の文章は、作家・井上ひさしの娘さんが書いたものです。

 

 仮チラシを作り、井上ひさしの新作の告知をするために動き出した。仮チラシには「新作決定」と大きく書かれ、その下にびっくりマークを大きく入れた。

 校正刷りを見せると、父の顔はみるみる険しくなり、難しい顔になった。「びっくりマークは作り手の押し付けである。作り手がチラシを受け取るお客様より熱くなっては、受け取ったほうの熱は一気に冷めるだろう」と。

 (井上麻矢『夜中の電話 父・井上ひさし最後の言葉』集英社インターナショナル、20151130日発行、119ページ)

 

 言葉も記号も、使うべきところに使ってこそ効果があります。「お客様より熱くなっては、受け取ったほうの熱は一気に冷める」ということを理解したなら、このような記号を使うことをためらうはずですが、テレビ関係者の中にそんなことに気付いている人はいないのかもしれません。

 ラジオでは「!」は使えません。この記号の代わりに、言葉遣いや発声などで伝えることになります。テレビの安易さが「!」を横行させているのかもしれません。

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