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2018年5月 9日 (水)

言葉の移りゆき(22)

「あけおめ」語の宝庫はNHK

 

 LINEなどSNSで使われることばはどんどん省略されている、ということを述べた文章の中に、次のようなことが書いてありました。

 

 コミュニケーションが専門の事業構想大学院大学の田中里沙学長は「『あけおめ ことよろ』(あけましておめでとう。今年もよろしく)がはやったように、ことばを省略することで新しい価値や親しみを作り出しているのではないか」と指摘する。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年5月2日・夕刊、3版、7ページ、「ことばのたまゆら」、前田安正)

 

 NHKはかつて、日本語の正しさや美しさを守る働きをしてきたと思います。そのNHKが、今では日本語を壊す役割も担っているように思われます。

 NHK総合テレビには、4音で番組名とする「あけおめ」語が並んでいます。それは記事にあるように「新しい価値や親しみ」を考えてのことなのでしょうか。放送は個人的なコミュニケーションではありません。公共の役割を果たしているのを忘れかけているのかもしれません。

 「あさイチ」から始まって「ごごナマ」、そして「シブ5時」と続きます。「サラメシ」や「うたコン」「Nスペ」「デジなび」「オシばん」という番組もあります。かつての教育テレビは「Eテレ」という名になっていますが、そこにも「バリバラ」などという番組名があります。

 「サラメシ」は、サラリーマンのメシ(やや下品な言葉)ということでしょう。「うたコン」は歌のコンサート、「Nスペ」はNHKスペシャルの略でしょう。「デジなび」も見当はつきますが、なぜ「なび」はひらがななのでしょうか。「オシばん」と「バリバラ」はよくわかりません。「Nスペ」のように、かつてはフルネームで称していたものを短縮したのがありますが、たった数音を短くする理由はあるのでしょうか。

 圧巻は「シブ5時」です。はじめは「シブ」の意味がわかりませんでした。それが渋谷を指していると知って、むしろ腹立たしさを感じました。これは「渋()5時」とは絶対に書けません。カタカナでカムフラージュしているのです。それにしても、公共放送のニュース番組名が「シブ5時」とは何という思い上がりでしょう。東京が(というより、渋谷が)日本の中心であるかのような名称を付けて、全国に流しているのです。東京以外の地域の人の感情などは無視していることが端的に現れています。

 他の4音番組名も、知っている人にはわかるだろう(知らない人は、普段から番組を見ていないからだ)という思い上がりのように思えます。これらの名称から「新しい価値や親しみ」を感じ取ることは無理でしょう。民放がどうであれ、NHKはきちんした日本語を使う習慣を身に付けてほしいと思います。

 これは番組名から拾い上げたのですが、例えば朝の番組「おはよう日本」などではコーナーの名称にも「あけおめ」語が使われています。甘ったれた子供のような言葉を、爽やかな朝の時間に聞きたいとは思いません。

 しっかりした内容の番組であるのに、番組名やコーナー名のせいで、軽薄で浮き上がってしまっている内容のように思われるのは得策ではありません。番組名は表札です。しっかりした表札を掲げて、信頼感のある番組にしてほしいと思います。

 ラジオ第1放送を番組表で眺めると、「旅ラジ」「Nらじ」「ごごラジ!」という番組があります。聴覚に訴える番組は、省略をやめて、きちんとした言葉で行ってほしいと思います。「ラジ」と「らじ」と「ラジ!」は、なぜカタカナとひらがなに書き分けるのでしょうか。ラジオ番組名であるのに感嘆符が付いているのはなぜでしょうか。一度、この3つを発音し分けて聞かせてほしいと思います。

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