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2018年5月11日 (金)

言葉の移りゆき(24)

「瞬き」の時間

 

 「瞬」という文字は、またたく、まばたく、まばたきをする、という意味を表します。けれども、熟語としては「一瞬」「瞬間」「瞬時」「瞬発力」のように使われて、極めて短い時間を表す使い方が多いように思われます。まばたくという意味の熟語はあるのでしょうか。眼科か何かの専門用語にはありそうな気がしますが…。

 ところで、「一瞬」というのは、一度まばたきをするほどの極めてわずかの時間のことですが、それはどれぐらいの長さなのでしょうか。一秒にも満たない時間であるとは思いますが、どれぐらいの長さであるかと改めて尋ねられると困ります。

 「一瞬の誤読」という見出しのついた文章(新聞記事)があって、次のようなことが書いてありました。

 

 10年ほど前のことだが、新幹線の車窓から外を見ていると、名古屋駅のそばでしばしば「クラヤ三星堂」という横書きの立て看板が目に入った。

 そのたびに、私はこれを「クラヤミ」と読んでしまうのが常だった。「三」という文字の書体がカタカナの「ミ」と紛らわしいだけでなく、同時に視界に入る「星」の文字が、夜を連想させるためらしい。

 (神戸新聞、2018年3月24日・夕刊、3ページ、「カマキラズの斧」、貴志祐介)

 

 見出しには「一瞬」という言葉が使われていますが、本文にはありません。それはさて置いての話です。

 人間の頭は、それこそ瞬時に文字を読み、連想を働かせているのですが、それは一秒にも満たない時間内でのことでしょう。頭の中の瞬間的な働きのスピードは相当なものですが、「瞬間」を物理的な長さで説明するのは難しいと思います。

 ところが、それに関する記事に出会いました。

 

 「一瞬いいですか」と言って、長々と話をする彼。一瞬って何だ? そもそも一瞬って時間は存在するのか。 …(中略)

 ドイツの生物学者ユクスキュルは「生物から見た世界」のなかで、「人間にとって一瞬の長さは18分の1秒」だと言った。映画も1秒に18コマでつくられている、と。「いまは機器の性能もあがったので、自然な動きを見せるには、映画は1秒に24コマ、テレビは約30コマが標準」と、映像制作会社てびも社長でディレクターの堀江將一郎さん。技術の進歩とともに、一瞬の時間は短くなっている。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年4月11日・夕刊、3版、5ページ、「ことばのたまゆら」、前田安正)

 

 「一瞬」は科学技術の進歩とともに短くなっているとはいえ、人間が実感する「一瞬」の長さはどれぐらいなのかを計測することは不可能でしょう。

 一秒間を何コマにも分けて撮影し、それを超スローに再現する映像に慣れてしまっている現代人には、心を張りつめるようにして「一瞬」に対峙する心の動きは失せてしまっているのかもしれません。

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