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2018年5月12日 (土)

言葉の移りゆき(25)

堂々と「潜入」する無神経さ

 

 他人の領分にほんのわずか「侵入」しても罪になります。「潜入」などという行為に及べば大犯罪です。その潜入を日常的に繰り返している集団があります。しかも、その行為を公開し、その実態を大多数の人に見せようと画策しているのですから、始末に負えません。

 「潜入」を『広辞苑・4版』で見ると、4つの意味が書いてあります。けれども、「②水中にもぐり入ること。」は特別な場面であり、「③〔天文〕(省略)」と「④〔動物〕()」とは学術語・専門語としての使い方です。日常語としての「潜入」は、「①こっそり入り込むこと。」であり、「敵地に-する」という用例が載っています。

 「潜入」は、見つけられないように、密かに、忍び入ることです。しかも、自分が何者であるのかという立場などを隠して行うことが多いと思います。普通の感覚の持ち主ならば、行うことをはばかる行為です。当然のことですが、入り込む相手先の了解を取り付けるはずはありません。

 自分が誰だということを明かして、相手の了解を取り付けてから「潜入」するような愚か者はいません。その「潜入」を日常的に繰り返しているのは、テレビのクルーです。例えば、NHKテレビの、ある日の午後7時30分からの番組と午後11時からの番組は、次のように紹介されています。

 

 プラタモリ 京都へ宇治名茶誕生の秘密?創業800年茶店潜入国宝平等院と茶の謎タモリ抹茶づくり挑戦

 SONGS ドリカム前代未聞のライブSP万博・太陽の塔から名曲&ヒット曲を熱唱48年ぶり!内部潜入

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年5月5日・朝刊、13版、28ページ)

 

 これは、一例に過ぎません。それぞれの民放も同様です。「潜入」という言葉を番組表で見ない日は無いと言ってもよいでしょう。番組表だけではありません。テレビの画面ではもっと頻度が高いでしょう。

 相手方の了解を得た後、大勢で入り込むことが「潜入」に当たるはずがありません。商品を誇大に宣伝すれば、排除命令を受けたり処分をされることがあります。テレビ番組の誇大宣伝はまったくの野放しと言ってもおかしくはないでしょう。報道の自由などと言う前に、自己に厳しい姿勢を持たなくてはなりません。大げさな表現で、徐々に日本語を壊していっているのがテレビであるということを自覚しなければなりません。単に「取材に訪れた」だけなのに「潜入した」と言うのは、普通の人間の感覚ではありません。

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