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2018年5月19日 (土)

言葉の移りゆき(32)

「お」を付ける言葉

 

 過剰に接頭語「お」を付けることを嫌う意見をしばしば目にします。けれども実際には「お」の付いた言葉は満ちあふれています。

 

 お仕事ドラマって、なんでわざわざ「お」をつける? 仕事ドラマでいいじゃないか。「お」をつけるほうが言葉として据わりがいい、またはセンスがいいとでもいうのか。 …(中略)… お仕事ドラマの「お」がもっぱら女性仕様とされているところに、ものすごーい違和感があるのですが。 …(中略)

 もちろん仕事も描かれているのだが、恋愛や家族、働く女性が主人公のドラマにつきものの女3人の飲み会場面が、「はい、ここにいれておきましょう」というタイミングで挟み込まれている。このあたり、定石というよりお手軽に映り、「お」だからかとひがみそうになる。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年5月9日・朝刊、13版、24ページ、「キュー」、島崎今日子)

 

 ある特定のドラマのことを論じているのですが、「仕事も描かれているのだが」「女性仕様」のドラマであるから「お仕事ドラマ」という触れ込みであるのだろう、と述べています。とは言え、そのような内容のものを「仕事ドラマ」と言ってもよいはずです。

 

 テレビだけではありません。新聞記事にも現れます。

 

 「以下の条件を満たす鉄道旅に出よ!」という師匠のお題に沿って、弟子が旅程を考えながら日帰りの小旅行に出るストーリー仕立てのテツ旅ガイドだ。

 (読売新聞・大阪本社発行、2018年4月23日・夕刊、3版、5ページ、「くらし本」、屋敷直子)

 『鉄トレ!』(交通新聞社刊)という本を紹介する記事です。「お題」という言葉は、本文にはここだけしか出ていませんが、記事の見出しは「お題に沿って鉄旅へG0」となっています。

 

 飲料メーカーのダイドードリンコが各地の県警と協力し、防犯を呼び掛ける「しゃべる自動販売機」の設置を進めている。方言交じりの親しみやすい言葉や、現役の警察官が吹き込んだ音声で、利用者に交通安全や特殊詐欺への注意を促す。

 (毎日新聞・大阪本社発行、2018年4月18日・夕刊、5ページ)

 

 この記事は本文全体に「お」は使われていませんが、見出しは「防犯『お声かけ』自販機」となっています。

 「お題」とか「お声かけ」と言っておけばやわらかく聞こえて、印象がよいという判断なのでしょう。上記の記事では、相手(二人称)との関係で使っているのではなく、丁寧語(美辞)の働きだけです。このような「お」は省いていくのがよいと思いますが、新聞や放送はお客さん(読者・視聴者)を意識して、「お」を減らすことをためらっているのでしょうか。

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