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2018年5月27日 (日)

言葉の移りゆき(40)

「東西」という場所

 

 JRや地下鉄などには「東西線」という名称が使われています。南北に貫くのでもなく、環状に回るのでもなく、ほぼ東西に走る路線であれば、わかりやすい名称です。

 ところで、この「東西」が物議をかもしました。大阪都構想の一環で、区を再編する案の中に「東西区」という名称があったのです。東区・西区・北区・南区なら市全体の中での位置を想像できますが、東西区と聞いて、位置を想像できるでしょうか。このことが報じられると、当然ながら異論続出となりました。

 「東西区」は、東西を貫く細長い区のように聞こえますが、北寄りにあるのか、南寄りにあるのか、想像できません。しかも、名称案では、北区や中央区よりも北側にある地域を「東西区」と呼ぼうとしたのです。言葉の感覚を疑いたくなる名付けです。

 

 都構想の具体案を議論する今月6日の法定協議会では、大阪市を「東西区」「北区」「中央区」「南区」の4特別区に再編する事務局案が示された。しかし、維新市議によると「東西区」の案には「東にあるのか西にあるのか分からない」といった意見が市民から寄せられていた。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年4月27日・朝刊、13版、31ページ)

 

 結局は東西区ではなく「淀川区」という案に変更されました。それにしても、阿倍野・天王寺・住吉・浪速・福島・生野・都島などという旧の区名が、無機質な北・南・中央という名前に変えられてしまいます。古くからの土の匂いのある場所が、コンクリートの街に覆われていくのと軌を一にしているように感じられます。

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