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2018年6月 8日 (金)

言葉の移りゆき(52)

「普通に」はプラスかマイナスか

 

 何かの作業を終えて「あー、しんどかった。」と言うと、「どれぐらい、しんどかったの。」と尋ねられることがあって、そのときに「しんどさは、まー普通や。」などと答えることがあります。ごく自然な日常会話の姿です。

 「普通にしんどい」ではなく、「しんどさ(の程度)は普通や」という、文の仕組みです。この場合の「普通」は、プラスでもマイナスでもなく、ごく一般的なとか、平均的なという意味です。

 「普通においしい」という言葉を取り上げたコラムがありました。

 

 「普通においしい」という言い回しをよく耳にするようになりました。普通の味なのか、おいしいのか。年配者にはまだ抵抗感のある表現ですが、「予想外に」「当たり前に」などの意味で定着しています。

 いつごろ生まれた表現なのでしょう。小学館元国語辞典編集長の神永暁さんは、2000年以降に生まれたのは確かなようだとみています。「平均的、一般的であるという意味で使われ、ニュートラルか、ときとしてマイナスの意味合いで使われてきた。ところが、プラスの意味にとらえられて普通においしい、普通にかわいいのような言い方が生まれた」とします。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年6月6日・朝刊、10版、13ページ、「ことばの広場 校閲センターから」、越智健二)

 

 「普通においしい」という言い回しを耳にするようになったと言っても、どうもそれは、テレビやラジオから聞こえてくるようです。

 単に「おいしい」ではなく、「普通においしい」という用法は、「普通に」を付けることによって、ニュートラルではなく、一種の強調表現となってプラスの感覚を与えることになるのではないでしょうか。「ときとしてマイナスの意味合いで使われてきた」というのに同感はできませんが、「予想外に」「当たり前に」というのは、少しであってもプラスの色合いが出ていると感じられます。

 考えてみると、「普通に」と表現する内容が「おいしい」とか「かわいい」とかであるから、多少のプラスを感じるのかもしれません。

 「普通に汚い」と言えばどうなるのでしょう。少し汚いという程度ではなく、かなり汚いという感じを表すことになると思います。「普通に醜い」も同様でしょう。すなわち、「普通に」は、普通を超えて、それより少し程度が進んでいるのではないでしょうか。

 もっとも、「汚い」というようなマイナス・イメージを備えた言葉に、「普通に」は付けないのだと言われれば、それまでですが…。

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