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2018年6月19日 (火)

言葉の移りゆき(63)

書名は不当表示にならないのか

 

 例えば、食品や薬品の販売で、「あなたは健康に蝕まれている」、「この食品(または薬品)を使えば回復する」と言えば、大問題になるでしょう。世の中の商品の大半は、不当表示が規制されていると言ってよいでしょう。

 ところが、書籍などの場合は、まったく好き勝手なことを言っても問題にならないようです。「あなたは馬鹿です」から「この本を読めば、たちどころに賢くなります」と言わんばかりのことが行われています。書名の付け方にも、そのような傾向があります。

 

 「知らないと恥をかく世界の大問題」

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年6月9日・朝刊、13版、2ページ、KADOKAWA・広告)

 

 恥をかこうと人の勝手なのですが、恥をかくからこの本を読みなさいと言わんばかりの書名です。人の弱点につけ込んで、本の購入を勧めようという姿勢は見え見えです。「あなたは健康に蝕まれている」というのと違いはありません。こういう書名は出版元がつけるのでしょうが、著者の了解なしには行われていないはずです。「知らないと恥をかく…」というのはシリーズで何冊も出ているようです。著者お好みの言葉のようです。

 この広告には出ていませんが、同じ著者には、「なるほど!日本経済早わかり」とか「そうだったのか!現代史」などという書名もあります。「なるほど!」や「そうだったのか!」は誰の感想でしょうか。著者ではなく読者のはずです。ということは、著者の述べることは素晴らしく、読者がそれに納得するという構図です。著者は何でも知っていて、知識の足りない読者が驚くということが書名に現れているのです。

 私はこのような書名の本を読みたいとは思いません。話は変わりますが、「〇〇先生のナントカカントカ」というように、自分のことを先生と言って、人を引きつけようとする本も同じです。書名に抑制力がはたらかないような人の文章は、あてにならないと思っています。

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