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2018年6月25日 (月)

言葉の移りゆき(65)

「良いこと」は「悪いこと」?

 

 かつて、自然災害などが発生したときに目にした表現に、「通信線の回復にしたがって被害が拡大する見込みだ。」というのがありました。この言葉を額面通りに解釈すると、〈通信線が回復すると被害は拡大する。だから、通信線は回復しない方が望ましい。〉ということになります。そんなはずはありません。

 この表現の意味は、通信線が回復すると被害状況が克明になるから、被害の数字はもっと多くなるだろう、という意味であるのですが、端折った表現であるから真意が伝わらないということであるのです。

 さて、公立図書館について、次のような文章がありました。

 

 砂蒸し温泉で有名な指宿は、平成の大合併で1市2町が新たに指宿市となった結果、市域は約150平方キロメートルまで広がりました。となると、簡単には図書館に足を運べないという人たちが出てきます。

 (神戸新聞、2018年6月21日・夕刊、3ページ、「未来の図書館を探して 8」、岡本真)

 

 この文章は何だか変です。いくつもあった小学校が統合されて学校数が減ったりすると通学が不便になります。そういう事情とは違います。

 指宿市の市域が広くなっても図書館の所在地は変わっていないはずです。ホームページで見ると、市内には指宿図書館(旧・指宿市内)と山川図書館(旧・山川町内)の2つがあります。旧・開聞町内に図書館はありません。このことは合併前と変化がないようです。市域が広がったから図書館へ行くのが不便になったということではありません。合併したから不便になったというのは筋道が通りません。

 私たちは往々にしてこのような文章を書くことがありますし、読む側もその通りだと納得してしまうことがあるかもしれません。

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