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2018年6月28日 (木)

言葉の移りゆき(68)

カギカッコと感嘆符の省略

 

 最近は、すぐに感嘆符を付けたがる表現が多くなりました。また、カギカッコを付けるべきところに付けない表現も多くなりました。

 カギカッコの省略という現象を、品詞の変化という観点から解釈することも行われているようです。こんな文章に出会いました。

 

 ビールメーカーK社の広告看板です。〈あなたの一番うまい!になる〉と書いてあります。 …(中略)

 ビール会社の広告で「うまい」を名詞として使うのは前例があります。A社は〈すべては、お客様の「うまい!」のために〉と10年以上前から言っています。S社にも〈うまいをつくる〉という広告があります。この業界では「うまい」が名詞なのはもはや常識でしょうか。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年6月23日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 

 筆者は「この業界では『うまい』が名詞なのはもはや常識でしょうか。」と述べていますが、それはビール業界だけでなく、食品すべてにあてはまることでしょう。しかも、この「うまい」という言い方を名詞化と解釈するのは行き過ぎであると思います。

 S社の〈うまいをつくる〉という表現は、「うまいものをつくる」の「もの」が省略されたに過ぎません。「うまい」が名詞になったわけではありません。あるいは、これも〈うまい!をつくる〉という表現の感嘆符が省略されたのかもしれません。

 さて、その感嘆符を伴う表現のことですが、S社の表現は〈「うまい!」をつくる〉のカギカッコを省略した言い方です。そのことは、A社の〈すべては、お客様の「うまい!」のために〉を見れば明瞭です。ここに挙げられているビール3社の表現はすべて、本来はカギカッコが必要です。K社も〈あなたの「一番うまい!」になる〉とカギカッコを付けるべきです。

 この記事にはK社の写真が添えられていますが、〈あなたの / 一番うまい! / になる。〉という3行書きが示されています。「一番うまい」がひとまとまりの表現であって、「一番」は「うまい」にかかる連用修飾語です。感嘆符を付けて、感動の意味を伴っていても、「うまい」はどこまで行っても名詞にはなれません。

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