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2018年7月31日 (火)

言葉の移りゆき(101)

固有名詞の「盛り合わせ」

 

 いくつかの国や企業や団体などを合わせて表現するときには、できるだけ短く言う方が能率的であると思います。けれども、漢字表現の場合はイメージがわきやすいと思いますがアルファベットではそうはいきません。

 日米韓とか、英仏独伊とか、中露印と言えば、すぐにわかります。日米韓をJAKなどと言うことはないと思いますが、外国企業名などではアルファベットを使うことが増えています。

 

 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン-頭文字をとってGAFA(ガーファ)と呼ばれる米IT企業が世界を席巻している。便利だけれど、情報独占の懸念も指摘されている。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年7月6日・朝刊、10版、13ページ、「耕論 オピニオン&フォーラム」)

 

 1ページの紙面を使った特集のタイトルは〈「ガーファ」の世界で〉となっており、引用したのは、そのリード文です。カギカッコを使うことはしていますが、もはや「ガーファ」という言葉が市民権を得ているような扱いです。これからは、この無味乾燥なアルファベットやカタカナがたびたび紙面に現れることになるのでしょう。大きな見出し文字に使って、新聞が率先して「ガーファ」を使い始めているのです。

 日本ではこのような場合に漢字を使いますから、親近感を持ちます。関西の大学名を例に挙げてみます。「関関同立」は、関西の私大をリードする関西、関西学院、同志社、立命館大学のそれぞれの頭文字を並べたものですが、一つ一つの学校が思い浮かびます。「GAFA」の味気なさとは雲泥の差でしょう。

 「さんきんこうりゅう(産近甲龍)」という面白い使い方もあります。参勤交代という言葉と、交流という言葉を連想し、イメージが定着します。京都産業、近畿、甲南、龍谷の頭文字を並べようとしたものですが、京都産業は「京都」の部分を犠牲にしています。

 こういうものは、そのうちの一つが欠けるような状況になれば、その言葉自体は消滅の方向をたどることになるのでしょうが、興亡は関西の私立大学よりも、IT企業の方がたぶん速いでしょう。けれども、そうなるまで新聞は、便利な表現として「GAFA」または「ガーファ」を使い続けるのでしょう。だいたい、「ガーファ」などという滑らかさのない発音は日本語の文脈には向いていませんが、新聞は、制限された字数の見出しには使いやすいと考えて、使い続けることでしょう。本文では遠慮がちに使いながらも、見出しにはそんな配慮などありません。美しい日本語というような価値基準をかなぐり捨てて、新聞の見出しは、日本語破壊の先鋒の役割を果たしているのです。

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