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2018年7月 3日 (火)

言葉の移りゆき(73)

人生の「峠」と「坂」

 

 自分が年齢を重ねてきたせいかもしれませんが、年齢を表す数字に「峠」や「坂」という言葉が付いた表現に出会うと、いったい何歳あたりのことを表しているのだろうかと、立ち止まって考えるようなことが多くなりました。

 

 80歳の坂をこえたあたりから昼寝を貪るようになった。朝食をとったあとや昼めしをすますと眠くなる。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年6月9日・朝刊、be9ページ、「生老病死」、山折哲雄)

 

 「峠」というのは、高くなっていって、そこから低くなっていくところです。変化が起きる地点です。例えば「80の峠にさしかかる」と言うと、70歳台が終わって、80歳台という新しいステージを迎えることだろうと思います。「80の峠を越えた」も同じように受け取られます。

 一方、「坂」というのは一方が高く一方が低いところです。また、傾斜そのものも表します。例えば、「80の坂にさしかかる」と言うと、80歳台が始まるということでしょう。それは誤解なく伝わると思います。

 ところが、「80の坂をこえる」と言うのは、80歳台が始まるということでしょうか、80歳台が終わるということでしょうか。少しあいまいに聞こえます。

 「78の坂」とか「79の坂」という言い方をする人はありません。それによって、「80の坂」という言い方は、細かく区切ったものではなく、おおまかに80歳台を指しているようにも受け取れます。80歳という1年間を意味するのではなく、おおまかな80歳あたりを指しているようにも感じられるのです。そのおおまかな数字が、80歳台(10年間)というあたりまで広がって解釈されることもあり得ると思います。つまり、「80の坂」をこえたら「90」ではないかということになるのですが…。

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