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2018年7月 4日 (水)

言葉の移りゆき(74)

「見える化」は報道・商業用語?

 

 言葉は的確な意味を伝えるべきですが、それを曖昧にしてしまうようなことをする場合があります。

 言葉を短くしようとする場合に使われる「的」「性」「化」などはその代表です。「社会的な問題をはらんでいる」「子どもたちに社会性を指導する」「遊びを通じて社会化を図る」などという表現の「社会化」「社会性」「社会化」は、意味が広がって、焦点がぼんやりしてしまって、肝心なところが明確でないことが多いのです。

 この「的」「性」「化」などを使わないように努めることによって、すなわち、他の言葉を使って表現しようと工夫することによって、言葉は伝えようとする力が強くなってゆくと思います。

 新聞の見出しは、1文字でも節約したいという欲求があるからでしょうか、漢語で短く表現しようとする傾向があり、「的」「性」「化」がどんどん現れてきます。

 

 はじめて目にしたときには新鮮さを感じた「見える化」という言葉も陳腐になり、曖昧な表現に感じられるようになりました。

 

 片付けや時間の使い方について講演を重ねる整理収納アドバイザー、井田典子さん(58)=神奈川県相模原市=は問いかける。

 「まずは3日間、時間の使い方を記録して、目に見えるようにしてみましょう」

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年6月7日・朝刊、10版、23ページ、松尾由紀)

 

 この記事は90行近い文章ですが、どこにも「見える化」という言葉は使われていません。見出しだけが独自に、

 24時間 「見える化」しよう

と書いてあります。記事にある「目に見えるように」することが「見える化」すると置き換えられているのです。記事を整理した人が「見える化」という言葉に飛びついたのでしょう。この場合の「見える化」は、文字や図表に表すということでしょう

 「見える化」という言葉に飛びついた例は次の記事にもあります。これは、「見える化」という言葉をセールスに結び付けたものです。

 

 勉強すればするほど「やる木」が育ちます-。文具大手のコクヨが、鉛筆に装着して文字や数字を書いた量を「みえる化」する文具「しゅくだいやる気ペン(仮称)」を開発中だ。 …中略…

 子供の努力の量をアプリで「見える化」し、宿題に取り組む習慣作りを手助けするのが狙いだ。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年6月8日・朝刊、13版、9ページ、久保田侑暉)

 

 この場合の「見える化」とは、グラフか何かで表すということでしょう。「見える化」と言っても特別なことではないように思います。

 これまでは「視覚化」などと言っていたものを「見える化」としたときには新鮮に感じました。けれども、動詞に「化」を付ける言い方は「見える化」以外に広がりはありませんから、いずれは消え去っていく用法であるのでしょう。「見える化」自体も使い捨てられる運命にある言葉でしょう。

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