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2018年7月 9日 (月)

言葉の移りゆき(79)

「書き込む」ではなくて「落とし込む」

 

 例えば地図の中に、調査の結果を幾種類かの記号に分けて書き込んでいくとします。かつては手書きであった作業が、パソコンの操作でたやすく行えるようになったのは嬉しいことです。手作業の場合は「書き込む」作業であったのですが、今では…。

 

 「まいかた」ちゃうで、「ひらかた」やで-。読み間違えられることが多い大阪府枚方市が、市名の知名度について全国調査している。9月末まで続け、結果を落とし込んだ全国地図を作製。難読名をPRに生かすべく、年内の公表を目指す。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年6月15日・夕刊、3版、12ページ、古田寛也)

 

 私たちはパソコンで文章を書くことをしていますが、それを「書く」とは言わないで「打つ」と言うことがあります。言葉の生活には「話す」「聞く」「書く」「読む」の4つの他に「打つ」という活動があるという説まで現れています。つまり、手書きで伝えるのとパソコン(や携帯電話、スマートホンなど)で書いて伝えるのとでは、行動そのものが違うし、文体などにも違いが生まれてきているという考えです。

 同様に、記号などを「書き込む」ことも、パソコンを使えば行動が違うというのでしょうか、「落とし込む」という言い方がされています。記号を書き入れる場合も「書き込む」「打ち込む」でもかまわないと思いますが、それを「落とし込む」と言うのはなぜでしょう。

 この「落とす」の意味は、上から下へ物を移動させるという意味で、手に持っている資料(調査結果)からパソコン画面に移動させるという意味でしょう。けれども、書き込むという丁寧さではなく、次々と無造作に移動させているというイメージがないとは言えません。「突き落とす」や「蹴り落とす」などという印象と重なるからでしょうか、

 同じ動きであることが「書く」「打つ」「落とす」と表現がさまざまになることを、日本語の豊かさとして歓迎すべきか、あまり望ましくない言葉が増えていくと考えるべきか、言葉を発信する側でちょっと立ち止まって考えてみることも必要なのではないでしょうか。

 

 なお記事には、枚方の地名について、『播磨国風土記』に、「河内国茨田郡枚方里」と記されているという記述があります。

 『播磨国風土記』(新編日本古典文学全集、小学館発行)を読んでみますと、揖保郡の項に、「枚方の里。枚方と名づくる所以は、河内の国茨田の郡枚方の里の漢人、来到りて、始めてこの村に居みき。故れ、枚方の里と曰ふ。」とあります。河内の枚方の地名が、播磨の枚方の地名の由来になっていることがわかります。

 また、『播磨国風土記』の飾磨郡の項には、「枚野の里」という地名があります。「枚方(ひらかた)」「枚野(ひらの)」ともに、「枚」は「ひら」と読んでいますから、「ひらかた」という読みは、ずいぶん古くから定着していた読み方なのです。

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