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2018年8月 8日 (水)

言葉の移りゆき(109)

東京で勤める、東京に勤める、東京都に勤める

 

 「以前、東京で勤めていた」という表現があります。その場合、「東京で勤める」と「東京に勤める」とはどう違うのでしょうか。「で」と「に」という助詞だけの差です。

 「東京で勤める」は勤め先が東京であったというだけで、勤め先がどういう会社や官庁であってもよいと思います。「東京に勤める」は、勤め先がその会社の東京本店や支店であるかもしれませんが、ことによったら東京都庁であったかもしれません。「東京都に勤める」は、東京都庁である可能性が大きいだろうと思います。

 さて、次の場合は、どこに勤めていたのでしょうか。

 

 以前、「ビール王国」ドイツに勤務していた時のこと。ロシアのプーチン大統領(65)がまだ30代の頃に通ったという旧東独ドレスデンのバーに行ってみた。

 (毎日新聞・大阪本社発行、2018年6月23日・夕刊、3版、9ページ、「憂楽帳」、篠田航一)

 

 このコラム欄はどういう立場の人が書くかということとは無関係に、この文を読んでみます。筆者は、「ドイツで勤務していた」のではなく、「ドイツに勤務していた」のです。しかも「ビール王国」という修飾語に引かれて「ドイツ国に勤務していた」という印象が強くなります。「で」という助詞一つで、筆者は国レベルの話をしているような気分に引き入れられます。

 この文章は、この後、プーチン氏が酒を傾けながら、客の様子をじっと観察していたという話になっていきます。

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