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2018年8月17日 (金)

言葉の移りゆき(118)

「こと」ではもの足りない?

 

 前回の続きです。「事案」という言葉が、新聞の社会面にも現れました。「事案」が市民権を得たのなら、小型の国語辞典も、この言葉を掲載しなくてはならなくなるでしょう。

 山口県周防大島町で2歳児が行方不明であったのを、ボランティアの男性が発見しました。その男性への取材記事が掲載されました。

 

 また今回のような事案があれば、元気なうちはどこにでも飛んでいくつもりだ。「何事も、対岸の火事だとは思わずに行動できる人が、もっと増えてほしい」と願っている。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月17日・朝刊、13版、30ページ、興野優平・原篤司)

 

 「今回のような事案」とありますが、これを事故と書くか、事件と書くか、それとも他の言葉を使うか、記者は迷ったのでしょうか。行政などが文章を公にするときも、言葉に迷うことがあるのでしょう。

 けれども、それをひとつひとつ、事故か、事件か、それとも他の内容かと、言葉を区別する必要があるでしょうか。社会面の記事で「事案」という言葉を見ると、仰々しいように感じます。「今回のようなこと」でじゅうぶんだと思います。記事を書く人は、それではもの足りないのでしょうか。何かに分類しなければという、記者の分析姿勢が現れたのでしょうか。

 しばらくは、「事案」という言葉がどのように現れるかということを見守りたいと思います。私にとっての「探究事案」の一つになりました。

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