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2018年8月25日 (土)

言葉の移りゆき(126)

「…しかない」という言い方

 

 「行くしかない」「読むしかない」という言い方は、そのような行動を避けることができないという意味です。

 この「…しかない」という言い方の例に、2つ出会いました。

 

 食べテツ&飲みテツに加え、鉄道がらみキャラクターを愛するキャラテツでもある私にとって、「これしかない!」と思える奴がいた。奥のとトロッコ鉄道(石川県能登町)のキャラ「のトロ」をフィーチャーしたカップ酒「清酒宗玄剣山」だ。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年7月29日・朝刊、be7ページ、「食べテツの女」、荷宮和子)

 

 「これしかない!」というのは、たぶん、最高の褒め言葉として使われているのでしょう。

 それでは、次のような表現をどう考えるべきでしょうか。明石商業高校が全国高等学校野球選手権大会の西兵庫予選で優勝したときの、応援団の様子を書いた文章です。

 

 七回には中軸の連打で3得点。応援団の嶋谷蒼君(1年)は「最高でしかない!」と跳びはねた。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年7月28日・朝刊、第2兵庫()13版▲、24ページ、山崎毅朗)

 

 この記事の見出しは、〈七回「最高でしかない!」 / 明石商応援団〉となっていて、文章よりも前に見出しが目に留まるのですが、この言い方は理に叶っているのでしょうか。これも、最高の褒め言葉には違いありません。生徒の言葉を取り上げて記事にしているのですから、その言葉があったことは確かなのですが、それを見出しにして、言葉に市民権を与えたのは新聞社の判断です。

 この「…しかない」という言葉は、名詞、動詞、形容詞、形容動詞などに接続するようです。

 名詞の場合は、例えば「これしかない」のように、それが唯一の選択肢であることを表しています。褒め言葉のように使われることもあれば、二進も三進もいかなくなって残された唯一の道というような場合もあります。プラスとマイナスの両面を表すことができる言葉です。

 動詞の場合は、終止形に接続して、例えば「買うしかない」「逃げるしかない」のように、そうすることが唯一残された道であるという意味です。どちらかというとマイナスのイメージが伴います。

 形容詞の場合は、終止形に接続して、例えば「舞台の照明は、眩(まぶ)しいしかない」のように使われ、「舞台の照明は、美しいしかない」という表現には首をかしげます。すなわち、よくない評価を、強調して表現する場合には使われますが、望ましい評価を表現することには違和感を覚えるのです。プラスに使われることは少ない言葉だと思います。

 形容動詞の場合も、連用形に接続して、例えば「最低でしかない」のような、良くない評価には使われますが、「最高でしかない」には賛成できないのです。この場合も、よくない評価を、強調して表現する場合には使われますが、望ましい評価を表現することには違和感を覚えるのです。プラスに使われることは少ない言葉だと思います。

 というわけで、「最高でしかない!」という表現を認めることは、新しい使い方を認めるということになるのだろうと思います。

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