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2018年8月28日 (火)

言葉の移りゆき(129)

 

「全車禁煙」は珍しいか

 

 喫煙を禁止する言葉は、生活環境の至るところに見られます。ほんとうは、そんな禁止の言葉がなくても、人の多いところでは喫煙を遠慮するのが、現代人の感覚のはずです。ところで、こんな記事を見かけました。

 

 高松発岡山行きの快速「マリンライナー」に乗り、一息つきました。前方の電光掲示板に〈全車禁煙〉という文字が流れていきます。

 ふと、「この『全車』は国語辞典になさそうだ」と気づきました。

 「全車」とは「全部の車両」または「電車全体」のこと。いたって普通のことばです。一般人の注意をひくことはまずないでしょう。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月25日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 

 「一般人」の私ですが、「禁煙」を広く徹底させるために、「全」を使った言葉はあちらこちらにあることに気付きます。ホテルなどの「全室禁煙」、ビルディングなどの「全階禁煙」、レストランなどの「全席禁煙」などです。

 筆者が、「全車」が国語辞典になさそうだ、と気付いたということは、新しく載せる候補にしたいという気持ちなのでしょう。言葉の用例を収集することは、私も日常的に行っています。「全車禁煙」という言葉を見たことはありますが、ああそうか、全部の車両が禁煙か、という程度で見過ごしてしまっています。

 『明鏡国語辞典』を見ると、「全車」はもちろん、「全室」「全階」「全席」も載っていません。飯間浩明さんの編集する国語辞典の最新版には「全室」「全階」「全席」は載っているのでしょうか。もし、そのうちのどれかが載っていなければ、「全車」とともに他の言葉も一括して載せてほしいと思います。

 けれども、「全〇」という言葉を網羅しようとしたら、その数は大変なものになるでしょう。「全車」はあるのに「全室」はない、「全席」はあるのに「全階」はない、と言い出したらキリがありません。「全車」という言葉は当たり前すぎて、何の新しみもないと感じている私は、「全室」や「全席」が国語辞典になくても、不自由さは全く感じません。

 

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