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2018年8月30日 (木)

言葉の移りゆき(131)

「カリスマ」の量産

 

 世の中には「カリスマ」が大勢います。あまりにも多数ですから、「カリスマ」の価値は下落しています。それでも「カリスマ」を量産しています。

 よほどの変わり者でない限り、自分で自分のことを「カリスマ」などと言う人はいません。「カリスマ」を量産しているのは新聞や放送です。この言葉には、毎日のように出会います。

 

 サラダ主体の総菜店「RF1」を全国展開し、会社は調理済み食品を持ち帰って食べる「中食」市場を切り開いた。そのカリスマ創業者の岩田弘三氏から一度は託されたものの、経営環境が不透明になったとして差し戻しに。「この2年間の成長をみて機は熟した」(岩田氏)と、再登板を告げられた。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月25日・朝刊、13版、7ページ、「新トップ2018」、久保田侑暉)

 

 「カリスマ」は、英雄や支配者などが持っている、人々を心服させて従わせる資質や能力のことです。小型の国語辞典では、「人々を惹きつけ従わせる超人的な資質・能力」となっていて、英雄や支配者に限らず、どんな立場の人にも使えるらしいのです。だから、カリスマ美容師なども登場するのでしょう。

 そもそも、今では、他の人よりちょっとだけ抜きん出ていたら、「超人的」という言葉を使っていますから、一般の人と「超人の人」とは紙一重です。そして、一般の人と「カリスマ」も紙一重です。この言葉を使う人がカリスマだと思えば、それで「カリスマ創業者」は成立するのです。「人々を惹きつけ従わせる」ようなワンマンに近い姿勢があれば「カリスマ」の資格は具わっていることになるのでしょう。

 人々を驚かせるに足りる「カリスマ」という言葉は、もはや何の稀少価値も持ち合わせることかせなくなってしまったのです。さて、新聞や放送は、次はどんな言葉を使い始めるのか、興味のあるところです。

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