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2018年8月31日 (金)

言葉の移りゆき(132)

差別意識丸出しの高校野球報道

 

 ひとつの学校の硬式野球部の監督が身を引くことが、これほど大きなニュースになるとは思いませんでした。記事のスペースは大変なものですが、見出しだけを引用します。

 

 高嶋監督が勇退 / 智弁和歌山 甲子園最多68

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月25日・夕刊、3版、1ページ。見出し)

 

 打撃優位の平成象徴 / 高嶋・智弁和歌山監督勇退

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月25日・夕刊、3版、7ページ。見出し)

 

 「野球への情熱すごかった」 / 高嶋監督勇退 名将ら惜しむ

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月26日・朝刊、13版、14ページ。見出し)

 

 「ノックできなくなった」 / 智弁和歌山 高嶋監督引退

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月26日・朝刊、13版、31ページ。見出し)

 

 1面、社会面、スポーツ面に大きな見出しで、長文の記事を載せています。

 4本の記事のうち最後のものは「引退」になっています。

 「引退」とは、現役から退くことですが、特別の職業や地位から身を引くことに使われる言葉です。「勇退」とは、後進に道を開くために自分から進んで身を引くことです。監督本人の気持ちは、引退に近いのか勇退に近いのかはわかりませんが、4本目の記事の見出しの場合は、「ノックできなくなった」と「勇退」とは矛盾するように感じられますから、「引退」としたのでしょう。

 ところで、この日は、全国高等学校軟式野球選手権大会が明石市内と姫路市内の球場で開催中でした。硬式野球の場合は朝刊・夕刊を問わず、取るに足りないような内容でも大げさな記事にして連日、1面トップに掲載し続けたのに、軟式野球の場合は8月25日・夕刊には、それに関する記事は何一つ掲載されていません。8月26日・朝刊には、「野球への情熱すごかった」の記事の下部に、それよりも少ないスペースで、6試合の結果がささやかに掲載されているだけです。たったひとりの監督の引退の方が、軟式野球の全国大会に比べて、何倍ものニュース・バリューがあるのです。もちろん、それは新聞社が報道価値を決めているのです。

 ほとんど年がら年中、高等学校の硬式野球に記事を載せ続けおりながら、軟式野球は全国大会であっても軽々しい扱いにしています。年間を通じて見ると、軟式野球の報道スペースは、硬式野球の100分の1にも満たないことは明白です。これはいったいどういう考えに基づいているのでしょうか。突き詰めて言えば、高等学校のスポーツを、教育的な観点を含めて報道する姿勢に欠けています。硬式野球だけを新聞社の方針にして、センセーショナルに商業的に、そして勝利至上主義的に報道しているように思います。眼中にあるのは、特定の強豪校であり、注目を集める一握りの選手たちであるような報道姿勢です。あまりにも差別意識の強い報道姿勢です。もちろん、記事のひとつひとつは、綺麗な言葉に彩られていました。

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