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2018年9月 3日 (月)

言葉の移りゆき(135)

「日本だけ」のバイキング?

 

 いろんな種類の料理をテーブルに並べて、好みのものを好きなだけ取り分けて食べる形式のものを「バイキング」と言います。豪華な宴席の場合もあれば、ビジネスホテルの朝食サービスの場合もあります。そのバイキング料理のことを説明した記事がありました。

 

 「バイキングという言葉に『食べ放題』の意味があるのは、日本だけです」と教えてくれたのは、バイキングの歴史やマナーに詳しい「バイキングコンシェルジュ」の今井寛司さん。

 1958年、帝国ホテルが新館を開業するにあたり、その時の社長さんが「みんなに注目されるようなレストランを作ろう」と考え、日本で初めて、定額で「好きなものを好きなだけ食べる」レストランを作ったんだって。 …(中略)

 よく「ビュッフェ(ブッフェ)」という言葉も聞くよね。これは「立食」という意味のフランス語。より高級感を演出するため、ホテルを中心に2000年代ごろから使われ始めたらしい。細かく言うと、ビュッフェには「食べ放題」の意味はなんいんだよ。キキッ。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月1日・朝刊、13版、1ページ、「帰ってきたモンジロー」)

 

 バイキング料理という名称は海外でも使われているのでしょうか。説明の図表・写真などもある、長文の記事ですが、バイキングの名称の広がりはどこにも書かれていません。「バイキング」と言いながら、食べ放題でないものが海外にはあるのでしょうか。

 「バイキングコンシェルジュ」という資格があることを初めて知りました。「バイキングという言葉に『食べ放題』の意味があるのは、日本だけです」と書いてありますが、海外に「バイキング」が無ければ、「食べ放題」という独自性を強調する必要はありません。「食べ放題」をバイキングと言う、と思っているのが、一般の受け取り方だろうと思います。

 「ビュッフェ(ブッフェ)」という名前の立食に「食べ放題」の意味はない、というのは、この際、無関係のことを持ち出しているに過ぎません。このような、論理的に成り立たないことを述べている文章は、読後の後味が悪いのです。

 立ち席のビュッフェは、東海道新幹線の1964年の開業当初からありました(現在は、廃止)から、ビュッフェが2000年代ごろから使われ始めたらしい、というのも、腑に落ちない説明です。

 この文章はずいぶん下品です。ときどき、突然のように「キキッ」「ウキャ!」というような猿の鳴き声が挿入されますが、「モンジロー」という猿は、鳴き声だけのためのキャラクターで、何の意味もありません。文章をぶち壊す働きだけをしています。

 文章には、論理的な正確さや、書き方の上品さがなくてはなりません。

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