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2018年9月 8日 (土)

言葉の移りゆき(140)

「治山」は植林関連用語?

 

 「治山治水」は古くから使われている言葉です。「治水」は、水害を防ぎ、水運や灌漑を便利にするために、河川の水流や水路を改良したり整備したりして管理すること、という意味で使われています。

 では、「治山」とはどうすることでしょうか。小型の国語辞典では、植林などをして山を整備すること、というのが基本的な意味として書かれています。

 西日本豪雨などで注目されたのに「治山ダム」というのがあります。これは、植林などのために役立つダムのことではないと思います。東広島市のダムのことを書いた、こんな記事がありました。

 

 治山ダムは、森林を守り山崩れを防ぐ目的で設置されている。27日の調査で、同市の同じ谷筋にある治山ダム6基のうち2基(いずれも幅約30メートル、高さ約6メートル)が、ダム機能が失われるほど壊れたことがわかった。最下流のダムは、ほとんど形が残っていなかった。

 (読売新聞・大阪本社発行、2018年7月28日・夕刊、3版、9ページ)

 

 今回の豪雨で注目されたのは、治山ダムを巨石(コアストーンと呼ぶのだそうです)が破壊してしまったことでした。「治山」が山を整備するという意味であっても、「治山ダム」は土石流や流木などを受け止める機能を持ったものであったようです。それが耐えきれなかったのです。

 そこで、「治山」の意味を、災害を防ぎ、森林資源を活用するために、植林をしたり山崩れや土石流を防ぐ構造物を作ったりして管理すること、というような意味に変更する必要はないのでしょうか。(このような書き方をすると、「治水」とのバランスも保たれます。)

 けれども、「治山」はもとのままの意味にしておいて、「治山ダム」という言葉だけに防災の意味を与えるという考えもあるのかもしれません。

 新しい言葉を国語辞典に加えるということに世間が注目し、改訂版が出るたびに話題になります。それに隠れて、古い言葉の意味説明を変更していくことはあまり話題になりません。けれども、こういうことも国語辞典の重要な働きであると思います。

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