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2018年9月11日 (火)

言葉の移りゆき(143)

「不」の連鎖

 

 「スズキ、検査の半数不正 /排ガス・燃料測定 30車種6400台」という見出しの記事がありました。本文には「不正」という文字が10か所以上出てくるのですが、このような内容の記事は、記者もうんざりした思いなのでしょう。同じ言葉の連続では、読む方もうんざりです。こんな表現の工夫がされていました。

 

 「抜き取り検査」という工程で、データを測定するために車を走らせる速度が国のルールから外れていた。検査条件を満たさず、得られたデータは本来は無効とすべきだが、有効なデータとして処理していた。 …(中略)

 検査条件を確認するのに必要な機器の性能が不十分で、検査員の判定ミスを招いたと説明している。鈴木俊宏社長は記者会見で「これだけの台数の誤った処理をしていたことは大きな問題。チェック体制の不備で、会社に責任がある」と陳謝した。 …(中略)

 石井啓一国交相は9日、「燃料・排ガスの検査は環境性能を保証する重要なプロセス。これが不適切であったことは極めて遺憾」とのコメントを出した。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月10日・朝刊、13版、1ページ、木村聡史・伊藤嘉孝)

 

 このニュースの関連記事が同じ日の7ページの紙面にありますが、その見出しは「スズキ、チェック不全 / 2年前も燃費測定不正」です。会社の機能が「不全」であったというのです。

 「不正」の他に「不十分」「不備」「不適切」「不全」というように、「不」という言葉が次々と使われています。こんなにたくさん使われると、一つ一つの言葉の意味の違いなどを厳密に考えることなどはせずに、使えそうな言葉を次々と繰り出したように思われます。

 しかも、「不〇〇」だけでは足りなくて、他の表現を工夫しなくてはならないようになったのです。

 「国のルールから外れていた」というのは不正行為そのものでしょう。「得られたデータは本来は無効とすべきだが、有効なデータとして処理」したのも不正です。「機器の性能が不十分」で「検査員の判定ミスを招いた」というのは言い訳ですが、不正につながっています。「誤った処理をしていた」「チェック体制の不備」も不正の原因です。国交相の言葉は、「不正」を遠慮がちに「不適切」と言い換えているようです。

 けれども、このように表現を違えていくことは考えものです。不正を行った側の言い訳に加担しないように心がけなければなりません。

 

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