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2018年9月16日 (日)

言葉の移りゆき(148)

「徹底的」の後ろに否定が来てもおかしくない

 

 「〇〇的」という言葉は、安易な言葉遣いであって、私の好きな言葉ではありません。けれども新聞や放送はもちろん、街角にもあふれています。こんな文章を読みました。

 

 制汗剤の広告は以前に取り上げましたが、これも興味深い例。〈ワキ、徹底的ににおわせない〉というコピーです。

 「徹底的」と言えば、「徹底的にやる」「徹底的に追及する」など、後ろには多く否定形が来ます。それが、意外にも「におわせない」と否定形になっています。 …(中略)

 「徹底的」の後ろが否定形というのは、絶対的なルールとまでは言えません。作家の町田康さんは、作品の中で〈徹底的に関係がなかった〉と表現しています。もっとも、その後に〈妙な言い方だ〉と書き添えていますが(「宿屋めぐり」)

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月8日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 

 「徹底」というのは、態度や行動などが中途半端ではなく、一つの考え方や方針で貫かれていることです。もともとは、自分自身などの姿勢を表す言葉です。「的」が付いて「徹底的」になっても、それは同様でしょう。

 〈徹底的に臭わせる・臭わせないない〉は、自分のことでなく相手(対象)に関わることです。臭わせようとか、臭わせないようにしようとか試みても、自分の意思を貫くことはできません。〈徹底的に関係がある・関係がない〉という表現も、自分の意思で完結できることではなく、様々な要素が関わっているのです。

 ところが、自分の意思(意志)に関わることであれば、後ろに否定形が来てもおかしくはありません。どこまでもやりぬくつもりであるのなら、「自分の意見は徹底的に曲げない」と言ってもおかしくはありません。「私は徹底的に事故を起こさないつもりで運転している」という表現もおかしくはないでしょう。

 「この町からは徹底的に火事を出さない」と言っても、広い町のどこかで起こるかもしれません。「デフレは徹底的に起こさないようにする」と言っても、社会の情勢によって、思い通りにならないことがあるかもしれません。そもそも、他者の動向に左右される事柄に「徹底的」を使うこと自体がおかしいのではないでしょうか。

 この言葉の用例は、もっと徹底的に調べた上で、結論を出さなければならないでしょう。「徹底的に調べる」とは、自分の意思で、可能な限りの努力をして調べることです。何か便利な方法で用例が無数に集まったとしても、他者から得た資料であれば「徹底的に調べた」ことにはならないでしょう。

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