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2018年9月20日 (木)

言葉の移りゆき(152)

名詞から感動詞に移行した「やばみ」

 

 新聞の広告に、「若者言葉がわからない」という文章が載っていました。文中の「国語研究で注目のテーマ」という言い方は大げさだと思いますが、おもしろい文章です。

 

 お盆休みを利用して、娘夫婦が帰ってきた。仕事の都合で正月は帰省できないので、会うのは1年ぶり。もちろん、孫娘もいっしょだ。

 スマホの動画で毎日見ているとはいえ、やはり本物は格別である。女房が「ばあば」と呼ばれて抱きつかれ、感涙にむせんばかりに「やばみ~」とうめいた。

 最近の若者が、感動したときにも「やばい」を使うのは知っている。それが「やばみ」に変化しているのか?

 「あら知らないの?いま中高生の間で流行ってるらしくて、一度使ってみたかったのよ」おおかたご近所の井戸端会議で仕入れたネタに違いない。 …(中略)

 「ほかにもつらみ、しんどみ、うれしみとか“み”を付けたほうがかわいいんだつて」 …(中略)

 そういえばこの前の同窓会で、予備校で国語を教えているという旧友に会ったっけ。試しに電話してみると、案の定、食いついてきた。

 「日本語に“楽しみ”はあるのに、“うれしみ”はなかった。学者の間ではむしろ、なぜ今までなかったのかが問題になっていて、国語研究で注目のテーマなんだよ」

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月1日・夕刊、3版、7ページ、グーグル合同会社の広告)

 

 「楽しい」という形容詞は、「楽しさ」や「楽しみ」という名詞形に変化させることができます。「辛()い」も、「辛さ」や「辛み」になります。「辛み」は「恨み辛み」のような言葉に取り入れられています。「〇〇み」という名詞形の言い方である「やばみ」「しんどみ」「嬉(うれ)しみ」などの言い方も成り立つはずです。

 広く使われていない場合に異様に感じるだけで、多くの人が口にすれば違和感はなくなっていくでしょう。「可笑(おか)しみを感じる」の「可笑しみ」、「赤みを帯びている」の「赤み」など、市民権を得ている言葉はあります。

 けれども、「楽しみ」「可笑しみ」「赤み」などは名詞として使われています。形容詞から派生した「〇〇み」という言葉は、あくまでも名詞(…ということ、…という様子)という意味です。

 感涙にむせんばかりに発したという「やばみ~」は、語尾をのばして感動詞としての使い方をしています。名詞的用法と一線を画した、このような「〇〇み」の感動詞的用法は、新しく起こってきた現象だと言うべきでしょう。

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