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2018年9月23日 (日)

言葉の移りゆき(155)

「!」の読み方の指示

 

 この連載(149)回の続きです。

 工藤直子さんの詩「あいうえ・おーい」は4連から成る詩ですが、その第1連を引用します。

 

 むかし むかし おおむかし

 ホモ・サピエンスの ごせんぞさまが

 さいしょの さいしょに しゃべった言葉は

 なんだろな?

 きっと「あ」だ

   あ! おれ生きてるな

   あ! いいな

 (工藤直子・詩、佐野洋子・絵、『あいたくて』、大日本図書発行、1991年9月14日、38ページ)

 

 この詩の題名や、詩の中に書かれている「・」「?」「!」は、発音しなくてもよいだろうと思います。読むときに、一呼吸あけたり、疑問の気持ちを込めたり、感動の気持ちを込めたりすることを示しているのです。詩は朗読(音読)されることが多いのですが、音読するときの助けになります。それが新聞の紙面とは違う点です。

 同じ詩集の中に「!」という題名の詩があります。「!」を発音しないとすれば、題名は無音です。その第1連を引用します。

 

 光と風をつれて

 つくしに変装した 春があるいてきた

 つくしは !のかたちして

 あっちこっちに ! ! ! !

 それを見たわたしも !になった

 (同書、58ページ)

 

 この詩は、つくしの形を「!」の形だととらえているのですが、詩は視覚だけで味わうものではありません。朗読できなければ困ります。

 題名の「!」には「びっくり」というルビが振られています。詩の3行目も「びっくり」、4行目は「びっくりびっくりびっくりびっくり」です。5行目にも「びっくり」のルビがあります。

 作者は符号の読み方にも配慮をしているのです。読み方が揺れないようにきちんと指示をしているのです。好き勝手に読んでくれ、読まなくてもかまわない、というような「好い加減さ」とは一線を画しています。

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