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2018年9月24日 (月)

言葉の移りゆき(156)

いくつも「見つけてしまった」

 

 以下に引用する文章で筆者は「とんでもないものを見つけてしまった」と書いています。私はこの文章を読んで、「とんでもない」わけではありませんが、面白いものをいくつも「見つけてしまった」のです。

 

 この夏、お伊勢参りにいそいそと出かけた。その帰り、近鉄宇治山田駅(三重県伊勢市)で特急を待つ間に、ホームの売店で、とんでもないものを見つけてしまった。

 伊勢限定とおぼしき、その商品、袋には、学生帽をかぶった魚類のカツオのイラストが描かれている。尾びれは、かの一家に飼われている「タマ」を彷彿させる白猫にかみつかれていて、パロディーとして権利的にギリOKなのかと気をもませる。昭和レトロな表書きは、「世界の海を股にかけ、酔いも甘いも味わって、辿り着いたがこの聖地 カツオチップになりました」とうたっている。

 内容量30グラムで290円。細長くカットしたアーモンドと、甘じょっぱく味付けした厚削りのカツオ節に、アオサがまぶしてある。味見してみると、アオサから磯の香りが立ち上り、魚の臭みも緩和して、なかなかグッジョブな働きをしている。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月22日・朝刊、be7ページ、「食べテツの女」、荷宮和子)

 

 興味深い表現を抜き出しますが、意味のわからない言葉はありません。へぇ~、そんな言い方があるのだというような発見です。それが連続しているのです。

 「権利的にギリOK」というのは「ぎりぎり大丈夫だ」という意味でしょうが、「ぎりぎり」を「ギリ」と短く言ってOKと結び付けてしまっていること。

 「聖地」という言葉は、近頃、大安売りの真っ最中です。何にでも「聖地」を使います。神聖視されている土地などという意味は、とっくに忘れ去られている状況。

 「甘じょっぱく」の「しょっぱい」は、関西では「辛い」と言います。「しょっぱい」は関東方言でしょうから、筆者は関西圏の人ではないだろうという推測。

 「グッジョブな働き」も、国語辞典には載っていなくても、意味はわかってしまいます。「ジョブ」と「働き」という意味の重なりはともかくも、290円のおつまみを「グッジョブ」などと表現する大袈裟さ。(「聖地」と同じような、言葉の大安売り。)

 これからの文章は、公的な新聞に載る文章も、個人的なつぶやきを増幅したような文章になっていくだろうということを予見させてくれるように感じました。

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