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2018年9月25日 (火)

言葉の移りゆき(157)

「へ・へ・へ」の「へ」

 

 新聞のニュースの見出しに「へ」という助詞があふれています。いろんな場合に「へ」を使えば安易な見出しが作れるからでしょう。ある日の新聞の夕刊から拾ってみます。

 

① 安倍首相 総裁3選へ / 自民 午後、国会議員投票

  (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月20日・夕刊、3版、1ページ。見出し)

 

 本文には「連続3選を果たすことが確実な情勢だ。」とあります。そのような結果になるだろうという場合に「へ」を使うことは多用されています。けれども、これは新聞・放送の世界だけの言い方でしょう。

 

② 進次郎氏、石破氏を支持へ

  (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月20日・夕刊、3版、1ページ。見出し)

 

 本文には「石破茂・元幹事長を支持する意向を固め、周囲に伝えた。」とあります。この段階では、もはや「へ」は不要ではないでしょうか。

 

③ 1年後の夢舞台へ 新生「花園」

  (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月20日・夕刊、3版、1ページ。見出し)

 

 本文には「2019年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会開幕まであと1年となる20日、W杯に向けた改修を終えた大阪・東大阪市花園ラグビー場が報道関係者に公開された。」とあります。W杯に向けて、という意味で「へ」が使われています。これはごく普通の用例でしょう。

 

④ 合意 11月に先送りへ / EU首脳会議 英の離脱交渉難航

  (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月20日・夕刊、3版、11ページ。見出し)

 

 本文には「来年3月末の離脱を前に、交渉の期限とされた10月の合意は見送り、11月に臨時の首脳会議を開いて決着をめざすことになりそうだ。」とあります。「……なりそうだ」という推測どおりになるかどうかはわかりません。先送りしても「合意」に達するかどうか流動的ですから、「へ」というのは無責任な表現です。

 

⑤ 大規模地震の帰宅困難者対策 / 方針作成へ中間報告 / 大阪府の有識者会議

  (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月20日・夕刊、3版、12ページ。見出し)

 

 本文には「地震発生の時間帯に応じた出勤や帰宅のあり方などについて基本方針の作成を求める中間報告をまとめた。」とあります。「基本方針を作成している作業の 中間報告」がまとられたのではありません。「基本方針を作ってほしいという内容の 中間報告」がまとめられたという意味です。このような曖昧な「へ」は使うべきではないでしょう。

 

 わずか3ページ分のニュースの見出しを並べただけですが、見出しを作る人は、もう一工夫すべきだという気持ちはぬぐい去れません。特に、未来の予測を述べているところに「へ」を使うのは避けるべきでしょう。

 あまりの安易さに「へへへのへ」と笑い出したくなりますが、これはこの日の夕刊に限ったことではありません。また、この新聞に限ったことでもありません。

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