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2018年10月 2日 (火)

言葉の移りゆき(164)

リズミカルな「ててんて」

 

 他国の言葉や他地域の方言を聞いて、おもしろい言葉遣いに、はっとさせられることがあります。逆に、自分たちが普段使っている言葉の中にあるのに気付いていないことがあります。

 次の文章を読んで、そんなことを意識させられました。

 

 以前、わたしの小説の感想で「大阪弁には『ててんて』なんていうかわいいリズミカルな言葉があるのか」と書いてあった。「……しててんて」の「ててんて」。そう言われると急に、素敵な言葉に思えてきた。少し距離をおいて発見してもらえるとは、すごくおもしろくて、うれしいことだと思った。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年8月27日・夕刊、3版、7ページ、「季節の地図」、柴崎友香)

 

 「ててんて」は、しょっちゅう現れる表現ではありませんが、言われてみるとリズムがあります。筆者は詳しく書いていませんから、どういう意味を表しているのかということは、この言葉を知らない人には伝わりません。けれども、関西人ならば、その意味をたちどころに了解してしまいます。この連載コラムは大阪本社管内だけのものであるとすれば、わからない読者はいないだろうと思って、筆者は説明を省略したのでしょう。

 そこで、老婆心ながら、ちょっと説明を加えます。リズムのある言い方ですが、意味の上から、そのリズムを区切ると、「……して」「てん」「て」に別れます。1つ目は、動詞に接続助詞「て」が繋がったものです。したがって、「寝て」「喋って」「安心して」などの他に、「呼んで」などのように濁音「で」になることもあります。

 2つ目の「てん」は終助詞で、過去に関することで、相手に念を押したり、強調したりするときに使う言葉です。「これは 大阪で 買()うてん。」というような場合の「てん」です。もっとも、現在および未来に関することを述べる場合は終助詞「ねん」を使うことになります。「それは 今度 大阪で 買()うねん」というように。

 3つめの「て」は、伝聞を表す終助詞です。〈……と言っている〉とか、〈……だそうだ〉という意味を、わずか一音の「て」で表します。

 ちょっとくどい説明のように見えるでしょうが、「ててんて」という、リズムある4音で、これだけの意味を込めているということも、関西の言葉のおもしろいところです。

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