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2018年10月 4日 (木)

言葉の移りゆき(166)

引き戸の「扉」は増えている

 

 古典を読むと「遣()り戸」という言葉が出てきます。横に滑らせて開け閉めをする戸です。寝殿造りの建物に設けられた、外側に開く戸を「妻戸」と言い、のちには、両開きの板戸を広く「妻戸」と言うようにもなりました。

 現在の建築物では、両開きの戸()よりも、横に滑らせる戸()が増えつつあると思います。それは当然、言葉遣いにも影響を与えます。こんな文章に出会いました。

 

 おそば屋さんの引き戸に〈自動扉〉と書いてあります。見つけたときは「やった」と喜びました。 …(中略)

 「戸」には、引き戸(スライド式)と開き戸(ドアノブを回して開ける)があります。一方、「扉」は、特に開き戸だけを指します。

 ところが、待てよ、と思いました。自動ドアの場合は、スライド式でも「自動扉」と言わないでしょうか。「扉」も引き戸を指すのでは。その例を集めたいと思いました。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月15日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 

 飯間さんは、戸(引き戸)に限って、「扉」という使い方の例を集めておられるようですが、「戸」の概念を広げると、引き戸タイプの「扉」の例は、たくさんあります。例えば、次の記事です。台風24号の接近に備える様子を書いています。

 

 神戸市は30日午前、メリケンパークなどにある防潮扉を閉鎖した。閉鎖すると道路交通に影響がある一部の防潮扉を除き、午後5時ごろまでに閉じた。

 (朝日新聞・大阪本社発行、201810月1日・朝刊、「神戸」版、13版△、29ページ)

 

 私は海岸近くに住んでいますから、近くに防潮扉がたくさんあります。中には開き戸タイプのものもありますが、それよりも引き戸タイプの方が圧倒的に多いのです。それらは区別をしないで「防潮扉」と言っているようです。

 一般の家屋にも門扉があります。「門扉」は小型の国語辞典にも載っています。門扉は開き戸が多いかもしれませんが、蛇腹式で横にのばすものも、ゴロゴロと全体を引っ張り出すものも、区別しないで、門扉と言っています。

 引き戸タイプのものを「扉」と言うのは、もはやごく自然に広がっていると思います。

 

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