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2018年10月 9日 (火)

言葉の移りゆき(171)

新聞が使うと、みんなが真似る

 

 記事の文章を引用する。気になる言葉の部分を抜き出しましたから、文脈は続いておりません。この記事は「ぬくもり求め 懐かし系 / 鍵ハモやシンプル家電、社員寮も」という見出しですが、話題が拡散して、焦点が定まりません。

 

 「出来ない所は言ってください」。先生の指導にあわせて鍵盤ハーモニカ(鍵ハモ)を押す指がカタカタと動く。 …(中略)

 売り上げが伸びている鍵ハモのフェスを昨年開くと、立ち見が出る盛況となり、昨秋以降、全国8カ所で教室を開いた。 …(中略)

 「世の中、娯楽番組もSNSもレスポンスを迫るものばかり。還暦から非デジタルにシフトしました。テレビもやめてラジオ。鍵ハモは息が音になり、人間らしい」。 …(中略)

 大手が退出した「絶滅危惧種」だが、14年に発売したCDプレーヤーは即完売し、 …(中略)

 「今後もシンプル機能の身の丈家電としてPRしていきます」

 総合商社では、濃い人づきあいも復活している。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月6日・朝刊、13版、7ページ、「けいざい+」、鳴澤大)

 

 文章の展開の仕方を問題にしているのではありません。用語のことです。

 「鍵盤ハーモニカ」を(鍵ハモ)と略して提示したら、あとは文中に何度使っても、見出しに使ってもよいと言わんばかりに頻出させています。(上記の引用がすべてではありません。)

 「鍵ハモのフェス」とか「SNSもレスポンスを迫る」とか「非デジタルにシフト」とか、外来語(や、その短縮形)のオンパレードです。日本語の中に定着している外来語であるかどうかが、その言葉を使う基準にはなっていないようです。

 ところが一方、「人間らしい」とか「身の丈」とか「濃い人づきあい」とかの日本語が、どのような状態のことを示しているのか疑問です。大きな言葉を振り回して書いている感じがします。

 「大手が退出」というのは、日本語の使い方としては、間違いでしょう。大手メーカーが「撤退」したのであって、〈改まった場所から引き下がって帰る(=退出)〉ことをしたのではないでしょう。

 NIE(教育に新聞を)と声高に語る前に、新聞は先ず、児童・生徒の手本となる記事を書いてほしいと思います。政治・経済・文化・社会・スポーツの区別なく、新聞全体がそうでなければなりません。(スポーツ面の見出しの中には、実に醜いものがあります。)新聞が使う言葉は、良いも悪いもみんなが真似るのです。

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