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2018年10月12日 (金)

言葉の移りゆき(174)

「停電」という言葉があるのに

 

 突然のように使われ始めた「ブラックアウト」という言葉は、意味がわからない言葉ではありませんが、なぜこの言葉を使わなければならないのかということを考えると不可解です。同じ日の新聞に、やたら使われています。

 

 9月6日午前4時17分。震度4だった北海道旭川市防災課の公式ツイッターが発信した。 …(中略)

 大規模停電(ブラックアウト)が起きていることが広がった。 …中略…

 初のブラックアウトが起きた北海道地震から6日で1カ月。テレビが映らない中、SNSが一段と注目された。

 (朝日新聞・大阪本社発行、201810月6日・朝刊、13版、1ページ)

 

 大規模停電(ブラックアウト)が起きた北海道地震では、テレビに代わってスマートフォンでの情報収集が有効だった。 …(中略)

 広域停電していた6日だけで約4万5千超、リツイートされた。

 (朝日新聞・大阪本社発行、201810月6日・朝刊、13版●、3ページ、須藤龍也・斎藤徹)

 

 最大震度7を記録し、41人が犠牲になった9月6日未明の北海道地震。静まり返った大地を激震が襲い、道内のほぼ全域が停電する日本初の「ブラックアウト」が起きた。 …(中略)

 地震で傷ついた北海道に追い打ちをかけたのは、ほぼ全域に及ぶ大停電(ブラックアウト)だった。 …(中略)

 北海道電力は本州から送電を受けたり、一部地域を強制停電して調整を続けたりしたが、発生から18分後、需給のバランスが崩れ、ほぼ全域で一気に電力を失った。

 (朝日新聞・大阪本社発行、201810月6日・朝刊、10版、32ページ、斎藤徹・芳垣文子)

 

 記事から判断すると、「ブラックアウト」というのは、「大規模停電」「ほぼ全域が停電」「ほぼ全域に及ぶ停電」する状況のことで、「広域停電」や「一部地域を強制停電」することは含まれないようです。

 ここに書かれている記事の中身からすると、「ブラックアウト」という言葉を使わなくても、じゅうぶん意味は伝わってきます。

 新聞は文字数を減らすために別の言葉(外来語など)を使うことがありますが、「ブラックアウト」は逆に文字数を増やす働きをしています。

 「停電」という言葉があり、「大規模停電」と言えばわかるのに、どうして「ブラックアウト」という言葉を重ねて使うのでしょうか。このような事態を欧米では「ブラックアウト」と言うから、日本でも使っておけ、というような追随思想なのでしょうか。そんな姿勢で外来語を増やしていくのは困りものです。

 この「ブラックアウト」という外来語は、既に、さまざまな意味で使われているのを知っていて、新しい意味を付け加えようとしたのでしょうか。安易に、そのようなことをにされては迷惑です。

 1986年発行の『ビジネスマンのためのカタカナ語新辞典・改訂版』(旺文社)の「ブラックアウト」の項には、このように書かれています。

 

 ①暗転。画面や舞台を急に暗くして、次の場面へ移ること。

 ②スポーツ放送などで、特定の地域にだけ送ること。

 ③戦時下などでのニュースの公表停止。

 

 1994年発行の『マスコミに強くなるカタカナ新語辞典・第3版』(学習研究社)の「ブラックアウト」の項は、次のとおりです。

 

 ①《映画・劇など》暗転。

 ②(戦時などの)報道管制。

 

 従来使われていた「暗転」の意味に近いのかもしれませんが、舞台劇などでの暗転は、意図的に行うこと(いわば他動詞)ですが、停電は、結果的に起こってしまったこと(いわば自動詞)です。大規模停電のことを「ブラックアウト」というのは、従来の外来語に、別の意味を加えることになります。望ましいことではありません。

 「ブラックアウト」はNHKのニュースでも使っています。「報道管制」ならぬ、「右にならえ報道」の典型でもあるように思われます。

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