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2018年10月21日 (日)

言葉の移りゆき(183)

スラングを日常語にする新聞

 

 「スラング」というのは、ある特定の社会集団の中で用いられる俗語のことで、卑語とか隠語とか言われることがあります。『事故物件怪談 恐い間取り』という本を紹介する文章に「嘘松」という言葉が出てきますが、これはまさにスラングです。

 

 「嘘松」なるネットスラングがある。真偽の疑わしい体験談を指摘する際に用いる単語で、あまりに出来すぎている逸話には容赦なく「嘘松」判定が下されてしまう。容易く情報を検索できる時代の産物だが、その背景にはすべてに根拠を求める震災以降の世相が影響しているのでは……などと、のんきに分析している余裕はない。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月15日・朝刊、13版、23ページ、「売れてる本」、黒木あるじ)

 

 上記の「嘘松」という言葉は、本の紹介のために必要な言葉でしょう。

 ところが、「スラング」は特定の集団内の言葉ですから、一般の記事で、そんな言葉を白日の下にさらして紹介する必要はないでしょう。次のような記事がありました。

 

 9月1日夜、雨でびしょぬれの少女(17)がツイッターでつぶやいた。

 「『泊めてもいいよ』って方は、DMで住みと年齢性別をお願いします」

 「DM」はダイレクトメッセージ、「住み」は住所のこと。そして、相手が検索しやすいように記号「#(ハッシュ)もつけた。「#誰か泊めて」  …(中略)

 返信はほとんど男性からだ。泊めてくれる男性を「神」と持ち上げ、ツイッター上では「#神待ち」という言葉も飛び交う。

 少女もそうしたつぶやきを知っていた。「(男性は)『やり目』(性行為目的)だし、男性からの呼びかけに応じるつもりはなかった」。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181013日・朝刊、13版、1ページ、有近隆史・田中聡子)

 

 このような言葉を引用しないと記事が書けないというのでしょうか。下品であろうと有害であろうと、スラングと言われるものを、まるで日常語であるかのように紹介しています。こんな言葉を知らなかった青少年がこの文章を読めば、新しい知識として貯えていくことになります。節度があってしかるべきでしょう。

 別の話題に移ります。「下町ロケット」というテレビ番組を紹介した、次の例もスラング(ネットスラング?)でしょうか。

 

 もはや「鉄板」と言える組み合わせだ。2015年に放送された人気ドラマの続編で、同枠でヒットした「半沢直樹」「陸王」の池井戸潤の小説が原作。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181014日・朝刊、13版、30ページ、「試写室」、矢田萌)

 

 国語辞典には、「鉄板」の、このような使い方の意味は出てきません。記者にとっては日常語であったとしても、読者にとっては驚きの対象でしかありません。

 テレビほどではないにしても、新聞の言葉遣いもずいぶん乱れてきたものです。こんな言葉を日常語として使われるのは困りものです。記者には、用語についての規制はないのでしょうか。

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