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2018年10月29日 (月)

言葉の移りゆき(191)

スポーツで行えば八百長だ

 

 報道機関というものは不思議な存在で、まだ起こっていないこともニュースにすることができます。

 1024日、臨時国会の召集日の夕刊の記事は、まさにそのような書き方でした。

 

 第197臨時国会が24日召集され、安倍晋三首相の所信表明演説が同日午後の衆参各本会議で行われる。首相は来年10月の消費税率10%への引き上げに向け「経済に影響を及ぼさないようにあらゆる施策を総動員する」と表明。

 (毎日新聞・大阪本社発行、20181024日・夕刊、4版、1ページ、高山祐)

 

 まだ発言が行われていないのにカギカッコで表現し、「表明した」とか「表明する」とかでなく、「表明」という言葉で文を終える乱暴さです。

 以下、この記事の、文末表現を列挙します。

 

 〇……改革する意欲を示す。

 〇……与野党協議の進展への期待感を表明する。

 〇……努力を重ねる」と述べ、自民党案の提示を機に議論を深めたいと意気込む。

 〇……新しい国創りに挑戦する」と表明。

 〇……世論の不信感にも配慮する。

 〇……「出入国在留管理庁」に格上げする意向を示す。

 〇……人材が集まる日本を創り上げる」と述べる。

 〇……「復旧を加速する」と表明。

 〇……「3年間集中で実施する」と表明する。

 〇……決意で臨む」と強調する。

 〇……日露平和条約を締結する」と改めて表明する。

 〇……「新たな段階へ押し上げる」と語る。

 〇……結果を出す」と述べる。

 

 1面トップ記事ですが、ここまでシナリオで出来ているのなら、国会でわざわざ時間を費やす必要もないと感じてしまいます。

 同じ夕刊(毎日新聞・大阪本社発行、20181024日・夕刊、4版、10ページ)には「安倍首相所信表明(要旨)」という記事があります。

 引用はしませんが、(朝日新聞・大阪本社発行、20181024日・夕刊、3版、5ページ、別宮潤一)の記事も、ほぼ同じような書き方です。

 一度、このような書き方の文章をスポーツ面でお目にかかりたいと思います。例えば、相撲、レスリング、ボクシングなどで、いかがでしょうか。試合する前から細かな経過がわたっておれば、それは八百長です。

 それが可能であるのが政治の世界であるのでしょう。八百長なのか駆け引きなのか知りませんが、予め発言内容が知らされています。政府から報道機関に向けて、前もって情報がもたらされるのです。政府と報道機関との間の八百長という意識はないのでしょうか。記事を書く側にとって、これほどラクな仕事はないでしょう。

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