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2018年10月31日 (水)

言葉の移りゆき(193)

「波間に浮かぶ」のは小舟のはず

 

 国語辞典を引くまでもなく言葉の意味がわかる場合でも、その使い方に面食らう場合があります。

 「波間に浮かぶ」というときの「波間」は、波のうねりとうねりの間のことです。例えば、椰子の実が波間に漂うことがあります。小さな舟ならば、荒れ狂う海の波間に翻弄されることがあるでしょう。舟よりも高い波頭の間ならば、「波間」という表現がぴったりするでしょう。

 さて、次のような文章は、ふさわしい使い方なのでしょうか。

 

 北海道別海町の野付湾で22日、ホッカイシマエビの秋漁が解禁され、三角形の帆をはためかせた名物の打瀬舟が波間に浮かんだ。

 明治時代から続く夏と秋の伝統漁法。エビが生息する水深2メートルほどの浅瀬の海草を傷めないよう風の力で船を動かし、漁をする。

 午前6時過ぎ、約20隻が沖で次々と帆を広げ、風の向きや強さを見ながら帆を二つ三つと増やしたり折りたたんだりして速度を調整し、漁にいそしんだ。

 (読売新聞・東京本社発行、20181023日・朝刊、12版、37ページ)

 

 記事には写真が2枚、添えられています。船は、わずかに波をうつ水面に浮かんでいるように見えます。弱い風に向かって帆を上げているようです。なんとも長閑な風景です。

 「波間に浮かぶ」のではなく、「さざ波に浮かぶ」と言うのがふさわしい気がします。「波間」は大袈裟すぎるように感じます。

 「波間」には、波が寄せてくるまでの絶え間という意味もあります。けれども、この漁は、そんな折を見計らって出漁したようには見えません。穏やかな天候のように感じられるのです。

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