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2018年11月11日 (日)

言葉の移りゆき(204)

言いたい放題の数値主義

 

 もし大阪で万国博覧会が開催されることになったら、もし阪神タイガースが優勝したら、もし北陸新幹線が大阪まで延伸されたら、そのときの経済効果は何億円(あるいは何兆円)になるという計算が行われて、発表されることがあります。関西ではある特定の大学教授の計算が重んじられているようで、その方の名前を見ることが多いのです。

 けれども、その経済効果をどのようにして算出されたのかということを詳しく説明したものに接したことはないように思います。その数値が正しいのか正しくないのか、後になって検証されたという話も聞きません。人目を引くようなことを言って、結果的には言いたい放題であったような気がしないでもありません。

 さて、似たようなことを報じる記事があります。

 

 神戸市は、2017年に市内の観光地やイベントを訪れた人が過去最多の3933万人だったと発表した。 …(中略)

 市観光企画課によると、内訳は観光地が前年比10・5%増の2394万人、行事やイベントが同15・5%増の1539万人。観光地を訪れた人のうち、日帰り客は同18・6%増の1858万人で、宿泊客は同5・9%増の536万人だった。観光消費額は同260億円増の3442億円。消費額単価は日帰り客が8108円、宿泊客が3万6117円だった。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月27日・朝刊、「神戸」版、13版△、27ページ、野平悠一)

 

 県は昨年度に県内の観光地を訪れた人が1億3905万人だったと発表した。前年度より488万人増え、記録の残る1980年度以降で最多を記録した。 …(中略)

 最多は阪神甲子園球場(432万人)で、明石公園(246万人)、姫路城(182万人)、淡路ハイウェイオアシス(167万人)が続き、前年度と順位は変わらなかった。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月27日・朝刊、「神戸」版、13版△、27ページ、川田惇史)

 

 喜ばしいニュースには違いありませんが、どのようにして集計したものか、わかりません。「イベント」に参加した人数は、計算しようとすればできるかもしれません。けれども「観光地」を訪れた人数は、どのようにして集計したのでしょうか。

 阪神甲子園球場はきちんとした入場者数をはじき出せるでしょうが、明石公園のように出入り自由で、地元の人が日常的に使っている場所はどのようにして計算するのでしょうか。姫路城は入場料を払って登閣した人だけでしょうか、周囲を散策した人を含めているのでしょうか。淡路ハイウェイオアシスはわずか数分間で買物をした人も計算の中に入れているのでしょうか。

 消費額についても同様です。宿泊料はともかくも、日帰り客の消費額など算出できるものなのでしょうか。

 兵庫県の計算で不思議なのは、1億3905万人のうち、上位の4か所の合計は1027万人に過ぎません。その10倍ほどの人を集める観光地が県内に散らばっているのでしょうか。まったく実感が伴いません。

 人出が多かったとか、人出が増えてきたとか言うだけでは具体的でありませんから、何でも数値で示したくなる気持ちは分かります。けれども、計算の仕方によって数値に格段の相違が現れることもあるでしょう。総計1億何千万という数字が半減することもあるかもしれません。こういう数値は言いたい放題のような気がしないでもありません。

 報道機関も、何の疑いもなく、発表された数字を受け売りしているように思われてなりません。

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