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2018年11月14日 (水)

言葉の移りゆき(207)

いろいろな「宣言」

 

 季語に「初雪」があって、その冬に初めて降る雪のことを言います。芭蕉に「初雪や水仙の葉の撓むまで」という句があります。暖地に住む者にとっては、ちょっとでもチラチラしたらそれが初雪かもしれませんが、富士山などではきちんと積もってはじめて「初冠雪」ということになるのでしょう。

 富士山にとっては「初冠雪」が冬の季節の到来かと思っていたら、それとはべつに「初雪化粧」があるのを知りました。

 

 富士山(標高3776メートル)の7合目から山頂までが15日朝、雪で覆われた。ふもとの山梨県富士吉田市は「初雪化粧」を宣言した。宣言は昨年と比べて11日早い。 …(中略)

 甲府地方気象台によると、山頂の15日午前7時の気温は零下8・6度。13日に気圧の谷が通過し、雨が降ったことでまとまった雪になった。山頂が雪をかぶる「初冠雪」は9月26日に同気象台が発表したが、その後、暖かい日が続き、夏山の姿に戻っていた。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181015日・夕刊、3版、1ページ、河合博司)

 

 気象台が発表する「初冠雪」は観測データに基づいたもので、客観性を持っているように思いますが、「初雪化粧」はずいぶん情緒的な言葉のように思います。山梨県側と静岡県側との「初雪化粧」の宣言がずれても、おかしくはないのでしょう。

 季節を表すいろいろな言葉があるのはおもしろいことです。むしろ季節の推移を知らせてもらえるから、ありがたいことかもしれません。

 けれども、ちょっと不思議に思うことがあります。台風などでも何時にどこに上陸したという情報は伝えられますが、その後は「日本海に抜けた」という程度で、何時にどこから抜けたのかということはわからないことがあります。「冠雪」や「雪化粧」はしっかり伝えられますが、いつ積雪が完全になくなったというようなことは伝わってきません。気象台では観測しているのでしょうが、新聞などが重視していない情報であるのかもしれません。

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