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2018年11月19日 (月)

言葉の移りゆき(212)

年号の表記法

 

 日本の新聞の文章は、基本的に縦書きです。縦書きには縦書きとしての制約があります。例えば、2桁の数字は半角で書き入れることはできますが、3桁以上の数字を1文字分で書くことはできません。

 4桁の西暦年号は、4文字を使って書いていますが、新聞の文字数としてはもったいないという気持ちがあることでしょう。そのために、下2桁を半角で書くことが広く行われています。その場合、それが1900年代の下2桁の年号なのか、2000年代の下2桁であるのかは、どこかできちんと明示して、読者を混乱させないようにする工夫が必要です。

 「99年」と書いてあるとそれは1999年のことだろうと判断し、「03年」を2003年だろうと判断するのは、ごく常識的なことでしょう。けれども、「50年」は過去の1950年なのか、未来の2050年のことを言っているのかは文脈で判断しなければならないでしょう。

 さて、オリンクピックの国内聖火リレーのルート選びのことが話題になっている記事がありました。前回のオリンピックは1964年で、次回は2020年ですから、その前後のことを下2桁の年号で表記しても混乱が起こらないだろうという判断があります。

 けれども、次の文章は、どうでしょうか。

 

 前回の東京五輪で聖火リレーの最終走者を務めた坂井義則さんは、広島県三次市出身。広島に原爆が落とされた45年8月6日に生まれ、14年に亡くなった。市の担当者は「地元の子どもたちに夢と感動を与えたい」と訴える。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181111日・朝刊、13版、35ページ)

 

 聖火リレーのコースは三次市を含むルートにしてほしいという要望があるということを言っている記事のようです。

 東京オリンピックの話題は1900年代と2000年代に限られると言えばそれまでです。けれども、〈45年8月6日に生まれ、14年に亡くなった〉というのは、数字だけ見ていると、不思議な文章のように思えます。1964年当時の聖火リレー走者の中には、1800年代終わりの頃に生まれた人もいなかったわけではないと思います。〈99年生まれ〉で、60代半ばで聖火リレーを経験し、〈01年に亡くなった〉という百歳以上の高齢者がいても不思議ではありません。

 ともかく、〈45年8月6日に生まれ、14年に亡くなった〉というような、表面の数字だけ見ていると転倒しているような文章が、これからは増えていくのでしょうか。私は、受け入れたいという気持ちはありません。

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