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2018年11月24日 (土)

言葉の移りゆき(217)

「極彩色」という言葉

 

 ウズベキスタンで人物壁画が発見されたというニュースがありました。くすんだものでなく、色鮮やかな壁画です。このような場合によく使われるのが「極彩色」という言葉です。

 記事にはこんな表現がありました。

 

 シルクロードをへて広がった仏教美術の源流をうかがわせる極彩色の人物壁画が、中央アジア・ウズベキスタンで発見された。 …(中略)

 縦横1メートル余の範囲に複数の人物が描かれており、赤や青の鮮やかな色彩が残る。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181118日・朝刊、13版、1ページ、永井靖二)

 

 「極彩色」とはどういう意味の言葉で、どういう場合に使われる言葉なのでしょうか。飛鳥時代の壁画が発見されたときにも使われたように思いますが、使われる範囲は限定されているように感じるのです。小型の国語辞典を見てみました。

 

 『三省堂国語辞典・第5版』  ひじょうに・精密(きれい)ないろどり。極彩。

 『新明解国語辞典・第4版』  (「ごくざいしき」の変化)非常に・精密(きれいな)いろどり。「- の絵」

 『岩波国語辞典・第3版』  非常に濃く手のこんだ彩色。はでで、けばけばしい色どり。

 『明鏡国語辞典』  いくつもの鮮やかな色彩を用いた濃密ないろどり。また、派手でけばけばしいいろどり。

 『現代国語例解辞典・第2版』  《ごくざいしき》濃くて派手な色彩。けばけばしい彩り。「極彩色の看板」

 

 国語辞典の説明に挙げられている言葉は、「精密」、「きれい」、「濃い」、「濃密」、「派手」、「けばけばしい」、「鮮やか」、「手のこんだ」などですが、一つにまとまりきらない様子です。むとろ、「精密」・「きれい」と、「派手」・「けばけばしい」とは対立するような気配も感じます。意味に広がりがあって、用例は限定される言葉なのでしょうか。

 大型の国語辞典も見てみました。(用例は省略)

 

 『日本国語大辞典』  (「ごくざいしき」とも) ①日本画の技法の一つ。濃厚な絵の具を用い、何回も重ね塗りすること。また、一般に濃くはでな色彩。濃彩。ごくしき。②ごてごてと塗った化粧。また、はでな服装。厚化粧。

 

 小学生向けの国語辞典にも「極彩色」は載っています。子どもたちにも身近な言葉なのでしょうか。

 

 『チャレンジ小学国語辞典』(ベネッセ)  目立つ色を使った、はなやかないろどり。「極彩色の絵」

 『学習国語新辞典・全訂第2版』(小学館)  いろいろな色で細かく色をぬること。けばけばしく、こいいろどり。「極彩色の絵」

 

 ここまで見てきますと、「極彩色()」という名詞あるいは形容動詞のように感じていた言葉が、「彩色(する)」という動詞とのつながりが大きいとも感じられるのです。動詞的要素は『日本国語大辞典』と『学習国語新辞典』を見て、はじめて気づきました。

 さて、さて……。テレビのハイビジョンや4K、8Kということが話題になっても「極彩色」という言葉は使われないでしょう(多分…)。それは、テレビには〈絵の具を使って、塗る〉という要素がないからなのです。

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