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2018年11月26日 (月)

言葉の移りゆき(219)

「ヒョーゴスラビア」という言葉を兵庫県が使う

 

 兵庫県は、本州の中では北端(青森県)と西端(山口県)の他に、ただひとつ、2つの海(日本海と瀬戸内海)に面した県です。ひとつの県が旧5国によって構成されているというだけでも異色ですが、その5国が異なった「道」から成り立っているのです。すなわち、但馬国と丹波国は山陰道、播磨国は山陽道、淡路国は南海道、摂津国は畿内です。これほど多様な成り立ち、多彩な文化を持った県は他にはありません。

 公益財団法人の兵庫県芸術文化協会が発行する「すずかけ」という機関誌があります。その中に、こんな記事がありました。記事を書いたのは、兵庫県阪神北県民局県民課というお役所です。

 

 「ヒョーゴスラビア」という言葉をお聞きになったことがありますか。これは摂津や播磨など五つの国からなる兵庫県の多様性を多民族国家である旧ユーゴスラビアになぞらえたもので、今年7月にSNSに投稿され大きな反響を呼びました。

 (「すずかけ」、201811月1日発行、6ページ、「地域の文化情報」)

 

 私は「ヒョーゴスラビア」などという言葉を聞いたことはありませんし、一般の新聞がこの言葉を取り上げて報道したかどうかということも知りません。お役所がこの言葉に飛びついて、記事の冒頭にこのような話題を持ってきた理由が理解できません。「ヒョーゴ(兵庫)」と「ユーゴ」の発音が少し似ているというだけで「スラビア」とは何の関係もありません。

 旧ユーゴスラビアが多民族国家であったことは衆知のことで、それ故に国が分かれたのです。まさか兵庫県の分割を意図しているわけではありませんが、多民族と多彩な文化とを同一視するのは困ります。

 実は、この記事は、「兵庫県地域文化を考えるシンポジウム」という催し(1117)の広報を兼ねた記事です。私は、伊丹市で開かれたこの行事に、聴衆として参加しました。その中のパネルディスカッションを聞いて驚きました。地域文化とは名ばかりで、商業的、営利的な観光産業を盛り上げようというような感じの議論が続きました。コーディネーター自身が、酒検定、宝塚検定、源氏検定などというものを市や町が行ったらよいとか、空港を盛り立てていこうとか強調していました。多彩な兵庫県の地域文化をどのように掘り下げて享受し、保存・発展させていくかという視点がどこかへ消えてしまっていました。

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