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2018年11月29日 (木)

言葉の移りゆき(222)

「課題の先進地」とは称え? 蔑み?

 

 「先進」という言葉の意味は、『明鏡国語辞典』によれば、「①政治・経済・文化などが他より進歩・発達していること。②年齢・能力・地位などが上であること。また、その人。先輩。」とあります。この説明に異議はありません。「先進」は、他より先に進むという意味の「先行」とは、違った意味を持っています。

 「地方は課題の先進地」という見出しの文章を読みました。見出しに関係のある表現を本文から抜き出します。

 

 地方が「課題先進地」と言われて久しく、高齢化や外国人技能実習生問題など社会や政治の課題は、都市部に先がけて現れる。地域で取材する記者たちが各地の情報を集め、解決に向けた取り組みや成功体験を報じることも全国紙の果たすべき役割の一つと考える。

 (朝日新聞・大阪本社発行、201811月6日・朝刊、10版、11ページ、佐古浩敏)

 

 私は、久しい以前から「地方が『課題先進地』と言われて」いたことを知りませんでした。筆者はその「課題先進地」という言葉をそのまま使って、それは自分が言い始めた言葉でなく、久しい前から使われていた言葉であると、言い訳をしているようにも見えます。

 「先進」という言葉は、評価したり賞賛したりときに使われることが多いと思います。「課題先進地」とは何なのでしょうか。たくさんの課題を提起してくれてありがとうという気持ちでしょうか。そんなふうには思えません。他の地域よりも課題をたくさん(あるいは、先行して)抱えている地域という意味でしょう。「課題先進地」というのは賞賛の言葉でしょうか。とんでもありません。この言葉には蔑みの気持ちが込められています。「他の地域よりも」と書きましたが、それはすなわち「中央よりも」という意味であり、もっとはっきり言うと「東京よりも」という意味です。「課題先進地」などという言葉は使うべきではないでしょう。差別用語の色合いがないとは言えません。

 課題は地方に現れるというのはあたりまえのことです。喜んで「課題先進地」になっているのではありません。東京を第一に考えていけば、地方(東京以外の地域)は取り残されていくのです。

 東京に住んで仕事をしている人には、意識しているか無意識であるかの区別なく、東京中心の考えが表現に出てしまいます。政治や経済の活動だけではありません。新聞も放送も同じです。私たちは毎日、そのような報道に接しているのです。

 この文章の筆者の肩書きは「ゼネラルエディター(GE)兼東京本社編集局長」となっています。新聞社こそ率先して地方分権を推進していく姿勢を持たなくてはならないはずです。

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