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2018年11月30日 (金)

言葉の移りゆき(223)

副詞に接頭語「お」が付く

 

 「お()」という接頭語は、体言や用言の上に付いて、尊敬語や謙譲語や丁寧語になります。「ご主人を亡くされて、お寂しくなられましたね」は尊敬表現、「カバンをお持ちします」は謙譲表現、「木枯らしが吹いてお寒くなりました」は丁寧表現です。

 物品を販売するときに、最初だけ安い価格にして、「お試し価格」とか「お始め割引」とか言うことがあります。「試し」「始め」は、動詞「試す」「始める」の連用形で、名詞化していると考えることもできます。それでも、「試す」「始める」という動詞の意味はきちんと残っています。

 こんな広告が目につきました。

 

 希少価値の高い国産の丹波黒大豆をぜいたくに使った黒豆のお菓子です。

  丹波の黒太郎 お初めてセット 通常価格1488円 特別価格1080

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181126日・夕刊、3版、1ページ、「()丹波の黒太郎」の広告)

 

 例えば「お始めセット」と言えば、お始めになる方に向けてのセットという意味の尊敬表現です。

 よく似た言葉ですが、「お初めてセット」と言う場合は、「お」は「初めて」にかかる接頭語になっています。「お始め」の「お」は「始め」にかかっていきますから、「お初めて」の「お」も「初めて」にかかっていくと見るのが自然でしょう。「初めてセット」という体言全体に「お」が付いているという解釈は無理でしょう。

 つまり、「お」が体言や用言に付くという原則から離れて、「お」が「初めて」という副詞に付いた尊敬語になっているのです。これはまったく新しい言葉遣いです。

 「始める」と「初めて」という、よく似た言葉だから生じた誤用でしょうが、実に珍しい用例だと思います。

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